Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

だいたひかるさんは全摘 選択肢増やす医師への質問の仕方

だいたひかるさん(提供写真)

 医師の説明のまま、だいたさん夫妻は全摘手術を受けることを決断。乳房を失い、抗がん剤治療の後、ホルモン療法を受けています。しかし、このケースだと、全摘せず乳房を残せた可能性が高かったと思えてならないのです。

■乳がんで全摘したオッパイは温存できたはず

 ポイントは、「ホルモン受容体陽性」。この用語は、乳がんのホルモン療法が効くことを意味します。いきなり手術を受けるのではなく、まずホルモン療法で腫瘍を縮小すれば、広く手術をする必要がなくなり、乳房温存手術を行うことができる可能性が高くなります。そうしてから放射線治療を加えれば、治療効果は全摘手術とほぼ同じ。

 しかし、現実は逆の選択をされています。ステージⅡの治療法として全摘はガイドライン上、間違ってはいませんが、女性の象徴を失うハンディは重い。治療効果が同じ可能性があるなら、乳房温存治療を選んでもよかったでしょう。乳房温存手術なら、手術の合併症の肩の運動障害も比較的軽く、術後の回復が早いというメリットもあるのです。

2 / 3 ページ

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。