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中京圏の特養事情 都道府県定員は愛知県がワースト1位だが

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 中京圏(愛知県・岐阜県・三重県)の市レベルで見た特養定員格差は、首都圏や関西圏ほど大きくありません。75歳以上の人口1000人当たりの入所定員は〈表〉のとおりです。最大が岐阜県本巣市の59.7(人分=以下略)、最少が愛知県清須市の13.1で、格差は約4.6倍にとどまっています。首都圏では青梅市(131.5)と小金井市(6.4)が約20.5倍、関西圏では南丹市(70.1)と岸和田市(10.8)が約6.5倍ですから、それよりはだいぶ小さいと言っていいでしょう。

 ワースト10の大半が愛知県内の自治体。実は愛知県は、都道府県レベルで全国ワースト1位(23・2)になっています。名古屋市自体が21・3で、すでにかなり低いのですが、名古屋市を囲む周辺自治体では、さらに低くなっています。

 一方、三重県は全国9位、岐阜県は18位で、特養の定員はそれなりに確保されています。〈表〉のランキングでも、ベスト10は岐阜県と三重県でほぼ占められています。とくに岐阜県南部の、名古屋市から比較的アクセスのよい自治体が目立ちます。名古屋市内で入所できなかった人を多く収容しているのかもしれません。

■「老人病院」と「老健」でカバー

 ただし、待機老人の人数を見ると、違った景色が見えてきます。愛知県が約1万1000人、岐阜県が約1万7000人、三重県が約1万人です。愛知県は特養が少ないにもかかわらず、待機老人が意外と少ないのです。

 それには理由があります。愛知県には、特養の不足を補完する介護療養型医療施設(老人病院)が約2300床もあります(岐阜県602床、三重県1063床)。これは大阪府の数字とほぼ同じです。

 さらに介護老人保健施設(老健)も1万6000床で、やはり大阪府にほぼ匹敵しています(岐阜・三重とも約6000床)。老健は短期入所(最大3カ月)が原則の介護施設です。そのため3カ月ごとに入所継続の判定が行われ、認められればさらに最大3カ月居続けられますが、多くは退所を要請されることになります。

 とはいえ3カ月間預かってもらえるのは、介護をする家族にとってありがたいこと。特養に空きができるまで、老健と自宅を行き来したり、複数の老健を転々とする老人も少なくないのです。ちょっと綱渡り的ですが、愛知県に限ればそれが比較的うまくいっているわけです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。