Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

4人に3人は痛いがんの骨転移 8割は放射線でよくなる

小林麻央さんは乳がんで闘病中(C)日刊ゲンダイ

「これから、痛みのある部位だけに放射線をあて、痛みの軽減も期待します」

 乳がんで闘病中のフリーアナウンサー・小林麻央さん(34)は今月6日付のブログにこう記しています。すでに肺や骨に転移していると報告していますから、放射線治療で軽減を図る痛みとは、骨転移による痛みではないでしょうか。今回は、骨転移について考えてみましょう。

 骨転移は、進行がん患者の7割に認められ、そのうち4人に3人は痛みに悩んでいるとされています。原発のがんとしては乳がんが最多で、前立腺がん、肺がん、腎がんの順。男女どちらにも、骨転移による痛みは起こりうるのです。骨の部位は、背骨が最も多く、骨盤や大腿骨、頭蓋骨にも及びます。

 たとえば、がんが背骨に転移すると、背骨を破壊することに伴う痛みのほか、背骨の中を通る神経を破壊することに伴う痛みも生じます。特に後者は、「焼けるような」「電気が走る」と表現されるつらい痛みで、ステロイドや抗けいれん薬、抗うつ薬などの鎮痛補助薬が効きやすいものの、オピオイド(医療用麻薬)が効きにくいとされます。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。