常識覆す新リハビリ 失語症は「磁気」で言葉を取り戻せる

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 安保教授のリハビリは2週間、入院して行われる。2週間後、同じ4コマ漫画のテストを受けると、治療前と一転し、オチのあるストーリーとして話せた。明らかに変わったのは、言葉がスムーズに出てくるようになったこと。磁気刺激と集中リハビリを12回(2週間×6回)受け、今では再就職して社会復帰を果たしている。

 安保教授のリハビリでは、磁気刺激を脳に与え、正常な働きを取り戻す手助けをする。

 磁気刺激を与える方法は、急性期と慢性期で変わる。脳卒中を起こしてしばらくの急性期では、「損傷した脳」に磁気刺激を与え、正常な働きを取り戻す手助けをする。ところが時間が経つと、脳は左右がバランスを保って機能しているので、右脳が損傷を受けた場合、左脳が右脳の働きを補うようになる。

「一般的には、健康な側の脳が損傷を受けた側の脳を『助ける』と考えられています。しかし私は、健康な側の脳の働きが強くなり、損傷を受けた側の脳を『抑制する』と脳機能画像の結果から考えたのです。そのため脳卒中から時間が経って後遺症が慢性化した場合は、『健康な側の脳』に刺激を与えて働きを弱め、損傷を受けた側の脳が正常な働きを取り戻せるようにします」

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