クスリと正しく付き合う

正しい「効果判定」がムダ遣いを解消する

「薬の適正使用」というと難解に思えますが、平たく言えば「ムダ遣いをしない」ということです。必要ではない薬(飲めない、飲まない)、効果がない薬、必要量以上の薬を使う(処方してもらう)のはムダ遣いといえます。

 薬のムダ遣いを解消する=適正使用するためには、「効果判定」と「コミュニケーション」が必要です。最近は、医師がしっかりと患者さんの病態に合った薬を処方し、薬剤師は効果や副作用判定をするという分業が急速に進んでいます。薬剤師が効果判定するためには、患者さんからさまざまな情報を伝えてもらう必要があるのです。

 まずは、決められた用法、用量で使えたか。「決められた通りに飲めなかった」という場合、どうして用法や用量を守れなかったのかを伝えてください。「この薬は飲みにくいから、飲み続けるのは難しい」というケースもあります。適正使用を続けていくには、患者さんと薬剤師がしっかりコミュニケーションをとることが大切です。

 また、薬を飲んでどんな効果があったかを伝えることも重要です。たとえば痛み止めや吐き気止めの薬は、本人でなければ効いたかどうかが分かりません。副作用があった場合も同様です。薬を飲んで何か不都合があった場合は、電話でもいいのでなるべく早く伝えるようにしましょう。

「この薬は合わないから……」と自己判断で用法や用量を守らない患者さんもたくさんいます。しかし、一言で「合わない」と言っても、効かないのか、効きすぎてしまうのか、強い副作用があるのか、さまざまです。効かない薬を飲むのはムダですし、かといって深刻な副作用があっては困ります。

 薬は、副作用に注意したり対処をした上で、しっかりと効果が得られるように使うことが重要で、それが適正使用になります。そのためには薬の「効果判定」が必要で、それが患者さんのムダな医療費の出費を抑えることにつながるのです。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。