Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

緩和ケアには最新分子標的薬並みの「延命効果」がある

我慢強さは捨てるべし(C)日刊ゲンダイ

 がん患者の6割は、がん診療拠点病院で治療を受けます。現状は、緩和ケアは心もとないといわざるを得ませんが、だからといって患者は決して痛みを我慢してはいけません。緩和ケアは、余命をも左右することが明らかなのです。

 転移のある肺がん患者151人を対象に、「通常の抗がん剤治療を行うグループ(74人)」と「抗がん剤と緩和ケアを併用するグループ(77人)」に分けて症状や生存期間を比較した研究があります。その結果、緩和ケアグループは、通常グループに比べてうつなどの精神症状が有意に少なく、生活の質が保たれていた上、生存期間が3カ月勝っていたのです。

「3カ月」は大したことないと思われるかもしれませんが、最新の分子標的薬でも延命効果は3カ月程度。緩和ケアの効果は特筆ものです。

 その素晴らしい効果を十分得るには、がんと診断されたらすぐに治療と並行してケアを受けることが大切。研究でも、緩和ケア併用群は、治療開始から3週間以内に緩和ケアチームが面談。その後は月に1回以上、痛みの治療や精神的なケアを行っています。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。