Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

緩和ケアには最新分子標的薬並みの「延命効果」がある

我慢強さは捨てるべし(C)日刊ゲンダイ

 何度も言います。がんの痛みの苦しさも、精神的なつらさも、我慢することはないのです。緩和ケアの外来や専門医が不十分だとしても、麻酔科やペインクリニックには痛みの治療を行う医師がいますし、精神科には精神科医がいます。患者や家族は、主治医や看護師につらい症状について相談することです。

 2年前、トヨタの米国人役員が麻薬取締法違反で逮捕されました。米国から医療用麻薬を密輸したためです。医療用麻薬というと、日本人は“麻薬”の恐怖感から避ける傾向があります。しかし、逮捕容疑となった薬は、米国では歯痛や腰痛、生理痛など慢性の痛みに広く使われるありふれた鎮痛薬です。

 そこからも分かるように、医療用麻薬をイメージで避けることはありません。日本でも、使える薬を適切に使う限り、安全に治療できます。がん治療についていえば、我慢強さは捨てるべきです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。