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心臓病集中治療室の地域格差 首都圏に全国の3割が集中

CCUが多い県と少ない県
CCUが多い県と少ない県(C)日刊ゲンダイ

 急性心筋梗塞のリスクに関連して、心臓病の医療供給体制について見ていくことにしましょう。といっても、単純に循環器科や心臓血管外科を開設している病院数や、医師数などをあげても面白くありません。今回はCCU(冠疾患集中治療室)の数で、自治体間の比較をします。

 CCUは急性心筋梗塞を含む重度の心臓病に対応した治療室です。設備や備品については、一般的なICU(集中治療室)とさほど違いません。補助循環装置(弱った心臓のポンプ機能を一部肩代わりする装置)など、心臓病特有の医療機器が常設されている程度です。大半の心筋梗塞患者は、普通のICUでも十分に対応可能です。

 最大の違いはソフト面。CCUには専門の医師や訓練されたナース、臨床工学技士などが勤務しており、24時間体制で患者の治療と看護に当たります。また、手術室や血管カテーテル室の近くに設置されているので、患者の急変に即応できるようになっています。

 急性心筋梗塞の患者数は年間約60万~70万人。そのうちの約4万人が、発病から1カ月以内に亡くなっています。また、すべての心臓病患者数は約173万人、死亡数は約19万6000人に達します。それに対してCCUの数はまだ少なく、2014年の統計では全国で323病院、1759床に過ぎません。

 そのため現状では、CCUの有無が心臓病の死亡率など統計上の数字に影響することはほとんどありません。しかし、その病院がどれだけ心臓病に力を入れているかのバロメーターになり得ます。われわれから見れば、CCUを有する病院が地域内にあれば、気持ちの上で安心感が得られるというわけです。

 表は都道府県レベルでのCCUの病床数をまとめたものです。首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)には合計515床、全国の約3割が集中しています。福岡、大阪、愛知といった大都市圏も、それなりの数を保有しています。

 一方、青森県にはCCUがまったくありません。島根・鳥取・長崎・山梨・秋田には、CCUを設置している病院がたった1カ所あるだけです。だからといって、心臓病死亡率が、必ずしも悪いわけではありません。しかし、医療供給体制にこれほど大きな地域格差があることは、無視できない問題です。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。