医者も知らない医学の新常識

不思議な因果関係 男性ホルモンが多いとウソをつかない?

 男性ホルモンである「テストステロン」が低下すると、元気がなくなったり、筋肉の力が落ちたりといった「男性更年期」といわれるような症状が出ることがあります。テストステロンは脳の発達にも影響を与えていて、悪い側面としては、男性の暴力的な言動と関係がある可能性があります。その一方で、生きるための活力やプライドのようなものも、テストステロンと関連があるという報告もあります。

 誰も見ていない場所で、目先の損得のためにウソをつくのは、プライドが低い人に多い行動です。それでは、こうしたウソをつく人が男性ホルモンを使用すると、ウソをつかなくなるのではないでしょうか?

 少しバカバカしい感じもするのですが、こうした研究が真面目に行われ、2012年の「プロス・ワン」という医学誌に発表されています。健康な若い男性にテストステロンの塗り薬を使い、それが効いている間にサイコロを使った実験をします。サイコロを振って出た数字に見合った報酬がもらえるというものですが、ウソをつけばたくさんの報酬がもらえます。その結果を、テストステロンを使わない場合と比較すると、男性ホルモンを使用することでウソをついた人が減っていたのです。

 これでテストステロンが「正直になるホルモン」と言うのは言い過ぎだと思いますが、意外に人間のウソというのも、体の状態と関係のあることなのかも知れません。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。