作業療法士が徹底解説 快眠法のウソとホント<後編>

心行くまでぐっすり眠りたい
心行くまでぐっすり眠りたい(C)日刊ゲンダイ

 睡眠の勘違いを正して熟睡したい。快眠のウソ・ホントの後編をお届けする。全国で睡眠セミナーを開催している作業療法士、菅原洋平氏に解説してもらった。

⑥空腹だと眠れなくなるため、就寝前でもしっかり食べる…×

 確かに、満腹になると眠くなる。食事で糖質を摂取して血糖が上がると、それを下げようとしてインスリンが過剰に分泌される。すると今度は、血糖が急激に下がって低血糖状態になり、脳の活動が低下して眠気を引き起こすからだ。

 逆に、空腹になると脳は「飢餓状態=生命の危機」と判断し、オレキシンという物質を分泌して脳を覚醒させ、食物を摂取させようとする。こうなると眠れなくなる。

「空腹で眠れないときは何かを食べた方がいい。しかし、満腹になるまで食べてしまうと、深部体温が上がって睡眠の質が下がってしまいます。そこで、大さじ1杯程度のご飯を、口の中でドロドロの液状になるまで噛んでから食べるのがおすすめです。疑似的に満腹状態をつくれば、オレキシンが減って眠くなります」

⑦トリプトファンを含む食品やサプリメントを摂取すれば快眠できる…×

 快眠が得られるとうたう食品やサプリメントのほとんどは、必須アミノ酸を主成分にしている。代表的なものが「トリプトファン」だ。トリプトファンは体内で「セロトニン」に変わり、N―アセチルセロトニンを経て、夜には睡眠ホルモン「メラトニン」に変化する。メラトニンの原料であるトリプトファンを摂取することが、睡眠にとって重要というわけだ。

 理屈は正しいが、ただ摂取するだけで快眠につながるわけではない。

「トリプトファンが代謝されてメラトニンに変換されるためには、別のホルモンや酵素が必須です。トリプトファンは『アルブミン』という物質と結合していて、そのままでは脳内に取り込まれません。アルブミンとの結合を切る役割はインスリンが担っていますが、インスリンは睡眠不足によって減ってしまう。また、トリプトファンを代謝する際に使われる酵素も、睡眠不足だと減少します。その状態でトリプトファンをたくさん摂取しても、使い切れないまま体外に排出されてしまうのです」

 トリプトファンは睡眠に対する意識を高めるために摂取して、同時に睡眠時間を確保するなど環境を改善しなければ、意味がないのだ。

⑧枕や布団はフカフカな方がよい…×

 人は一晩に20回程度、寝返りをしている。敷布団と体の間を換気して放熱することで、体温の上昇を防ぐためだ。しかし、フカフカなマットレスや枕では、うまく寝返りを打てないケースがある。

「寝返りは、そのまま横に転がるのではなく、一度体を持ち上げて空中で向きを変えます。体を持ち上げるためには筋力が必要です。筋肉質で運動習慣がある人は、フカフカで軟らかいマットレスや枕でも、体をすんなり持ち上げることができますが、筋肉が少なく、運動習慣がない人が同じ寝具で眠ると、寝返りがうまくできず、熱がこもって睡眠の質が低下します」

 寝具の選び方は個々の筋力によって変わる。

「枕は、あおむけに真っすぐ寝たときに、あごが上に行くでもなく下に行くでもなく、真っすぐ前を向けるものがおすすめです」

⑨ベッドの中でスマホを見てはいけない…○

 スマホから発せられるブルーライトがメラトニンを抑制するといわれるが、スマホからはそこまでの量のブルーライトは出ないという。理由は他にある。

「人間の視覚には『能動的視覚』と『受動的視覚』の2種類があります。読書などで自分から視線を向ける場合は能動的視覚、テレビやスマホなどの刺激に対して視線を向ける場合は受動的視覚です。動物は、敵を発見するために受動的視覚を使っています。脳が覚醒してしまうため、眠れなくなったり、睡眠の質が下がったりしてしまうのです」

⑩アイマスク、耳栓の装着で寝つきがよくなる…×

 明るい場所で寝る機会が多い場合、網膜に光が当たるのを防いでメラトニンの抑制を防ぐアイマスクは理にかなっている。耳栓も、パートナーのいびきなど睡眠中に音がうるさくて覚醒してしまうケースでは効果的だ。

「ただし、どちらも寝つきをよくするために使用するグッズではありません。入眠するとき、物音が気になって眠れない人が耳栓を着けても、結局、覚醒が続いて眠れない場合も多い。あくまでも入眠後、睡眠を妨げないために使うものだと分かった上で使用しないと、逆効果になりかねません」

 これで、すっきり快眠できる。

関連記事