天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

サルコペニアは心臓を悪化させる

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 高齢化社会が進む日本では「サルコペニア」が深刻な問題になっています。筋肉の減少による「加齢性体力低下症」とも呼ばれ、加齢によって骨格筋量が減少して筋力が低下し、身体機能も衰えてしまう病態です。

 体幹筋肉を使用する運動量が減少することから、歩行速度の低下、握力の低下に至り、筋肉量が減少してしまう悪循環に陥ります。その結果、体を動かしにくくなって転倒リスクが上昇するなど、日常生活が困難になったり、活動量が落ちることで、時として高度な肥満を招き、生活習慣病のリスクがアップしてしまいます。

 とりわけ高齢者がサルコペニアになると、筋肉量の減少→活動量の低下→食欲低下→食事摂取量減少による低栄養→さらなる筋肉量の低下や免疫力の低下……という死への悪循環に陥ってしまいがちです。日本では65歳以上の高齢者の5人に1人がサルコペニアともいわれるだけに、深刻な問題なのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。