大都市圏なんでも健康ランキング

東海圏の「冠疾患集中治療室」偏在は道路網整備でカバー

(C)日刊ゲンダイ

 東海3県(愛知・岐阜・三重)は全国的に見れば、比較的多くのCCUを装備しています。愛知県が96床で全国4位ですし、三重県(35床、15位)、岐阜県(18床、21位)も中位以上に食い込んでいます。ですが他県と同様、人口に対して数が圧倒的に不足していますから、いざとなってもCCUに収容してもらえる確率は低そうです。

 愛知県では名古屋市と北側、東側のエリアに、CCUを有する病院が集中しています。また豊橋市など県東部にも、それなりに配置されています。しかし、一宮市や豊田市などはゼロです。

 岐阜県では岐阜市周辺に集中しており、多治見市や大垣市といった比較的人口の多い地方都市ですら、CCUは装備されていません。三重県は意外にも南勢志摩地域が、もっとも多くCCUを持っています。また四日市など北勢地域も、比較的充実しています。

 東海地方は他所と比べて、道路網が発達しています。広く平らで人口密度の低い濃尾平野は、モータリゼーションに最適の環境です。高速道路だけでなく、国道、県道、バイパスが縦横に延びており、信号や渋滞が少ないため、スピードが出せるのです。そのため愛知県などは、交通事故の死者数がワースト1位になっているほどです。

■平均病院収容所要時間は全国トップクラス

 ただ、この道路網のおかげもあって、救急搬送が他県よりも迅速に行われているのです。消防庁の資料(2014年)によれば、愛知県の平均病院収容所要時間(救急車の要請があってから患者を病院に収容するまでの平均時間)は32.4分で、全国4位(1位は福岡県の30.2分)。岐阜県が32.8分、三重県が39.1分と、いずれも上位に食い込んでいます。一方、最下位は東京都で、何と51.4分もかかっています。

 最近では、電気ショックで心臓を蘇生させるAEDが、学校や主だった施設内に設置されるようになったため、急性心筋梗塞で病院搬送前に心肺停止になるケースは減ってきています。しかし、搬送時間が短いに越したことはありません。それに心筋梗塞の多くは普通のICUでも十分対応できるのです。東海圏、とりわけ愛知県と岐阜県南部、三重県北部は、CCUの数より、搬送スピードで勝負しているといえるのかもしれません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。