あの話題の治療法 どうなった?

手術がポビュラーな白内障 予防薬はどうなっているのか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 2003年、白内障について初の診療指針をまとめた当時の厚生労働省研究班が衝撃的な報告を行った。

 白内障の進行を抑える目薬(一般名ピレノキシン、グルタチオン)や飲み薬(同チオプロニン、パロチン)について、「過去の臨床試験データを検討したところ、信頼度の高い試験はほとんどなく、有効性は十分証明されていない」とし、「投薬を検討してもよいが、十分な科学的な根拠がないため、患者への説明と同意を得た上で使用することが望ましい」と、使用に消極的な姿勢を見せた。

 白内障は加齢により水晶体が濁り、視力が低下する病気で、早ければ40歳から発症し、80歳を越えると、ほとんどの人がかかるといわれている。現在は手術が決定的でポピュラーな治療法だが、当時は薬で進行を抑えるのが一般的だっただけに、騒ぎになった。

■ポーランドでは50%抑制という報告も

 研究班メンバーが「効果不明なクスリが、定期的に通院させるための手段として使われている実態が問題」と発言したこともあり、当時の眼科医が一斉に反発。激論になった。その後、白内障予防薬はどうなっているのか?

「初期の白内障に限っては進行を抑える可能性があるかも」と言うのは都内の眼科専門医だ。

「ポーランドの病院で、40歳以上の白内障患者さんをピレノキシン点眼群とプラセボ群に分けて2年間観察し、前者が初期の白内障の進行を50%抑制したと報告したからです。動物実験で効果があったとの報告もあります。私も患者さんに『白内障の薬はないの?』と問われれば『こういう薬があり、こういう報告がありますが、使いますか?』と聞いて、患者さんの同意があれば薬を出します。ただ、人を対象にした他の報告はあまりなく、この報告だけで効果を判断するのは難しいと考えています。患者さんには『この薬で水晶体の濁りがすべて解消されるわけではない』とお話ししています」

 効果はあっても限定的だということか。