クスリと正しく付き合う

ジェネリックのメリットは「安さ」だけではない

 ジェネリック医薬品を選択することで、薬価が3割程度、物によっては5割以上安くなることは先にもお話ししました。それでも、「先発薬の方が良い」という患者さんもいらっしゃいます。

 そうした患者さんの多くは「効きが悪い」「合わない」といったジェネリックのデメリットを主張されます。確かに、先発品と比べて薬効が劣るジェネリックがあるのも事実ですが、そうしたケースは極めてまれです。薬剤師が“良いジェネリック”をしっかりと見極めてさえいれば、上記の理由に該当する事例はまずないといっていいでしょう。

 逆に、ジェネリックの中には先発品より優れているものもあります。例えば、飲みやすさ(服薬アドヒアランス)に配慮した製剤としては、「OD錠」というラムネ菓子のように水なしでの服用を可能にしたものや、子供向けの味付け(苦味への配慮)を改良したもの、より小さく飲みやすくなったものなどが挙げられます。

 また、薬の取り間違いや飲み間違いの防止といった医療安全に配慮した製剤としては、錠剤の印字やパッケージを見やすくしたものが挙げられます。

 このように、ジェネリックの中でも「効果や副作用が同じで、付加価値(メリット)があるもの」であれば、選ぶ価値は高いといえます。もちろん、先発品を選ぶか、ジェネリックを選ぶかは消費者である患者さんの自由です。ただ、国民皆保険制度の維持、薬剤費(医療費)の圧縮といった点を考慮すると、なるべくジェネリックを選択するのが望ましいと個人的には考えています。ジェネリックによって節約できる税金は、巡り巡って自分自身にも、次世代にも返ってくるからです。

 ジェネリックは、安かろう悪かろうではないということを広く知ってもらい、適切な薬剤を選択してもらうためにも、薬剤師はしっかりとした情報提供に努めるべきだと強く感じます。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。