役に立つオモシロ医学論文

高齢者の認知症予防にはパソコンの使用が効果的?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 インターネットの普及によって、近年では高齢でもパソコンを利用する人が増えているようです。総務省の統計では、60歳以上のインターネット利用状況は大きく増加していることが示されています。

 パソコンの使用は、ディスプレーに表示されている内容を理解することだけでなく、文字入力やマウス操作のために手を動かしたりと、かなり認知機能が駆使される作業と言えます。そのため、「高齢者における定期的なパソコンの使用は、認知症を予防するのではないか」と期待が集まっています。

 そんな中、毎日のパソコン使用状況と認知症発症リスクの関連を検討した論文が、2016年5月、オランダの出版社が発行するアルツハイマー病の専門誌に掲載されました。

 この研究は、認知機能障害のない高齢者27人(平均86.7歳、1日平均51.3分のパソコン使用)を対象としたものです。

 研究の結果、記憶の保存や形成、想起に関わるといわれている脳の「海馬」と呼ばれる領域の容積は、パソコンの使用が少ない人ほど小さくなっていました。

 脳の海馬容積が小さくなるというのは、認知症の発症リスクが高まることを示唆しています。

 つまりパソコンの使用時間が長くなると、認知症の発症リスクが低下する可能性が示されているのです。

 しかしながら、この研究では海馬の容積を検討したのであって、認知症そのものの発症頻度を検討したわけではありません。パソコンの使用で認知症を予防できると結論することは難しいように思いますが、論文の著者らは、「パソコンの使用時間が短くなってきている高齢者では、認知症の兆候を早期に発見できるかもしれない」と述べています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。