「認知症」を知るための20週間

専門家が百寿者に聞いて分かった「ボケない人の生活」

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 団塊の世代が後期高齢者に突入する2025年には、予備群を含め3人に1人が認知症になるという。認知症は、ひたひたと迫りくる問題だが、大事なのはむやみに恐れず、きちんと実情を知ること。これから20週間にわたりそのための情報を提供する。第1回は、認知症にならない人の生活。百寿者(100歳以上の人)に詳しい白澤抗加齢医学研究所の白澤卓二所長(長寿遺伝子)に聞いた。

 2013年、男性で人類史上初めて116歳に到達して亡くなった木村次郎右衛門さんは、晩年まで毎日2~3時間かけて新聞2紙を隅々まで読むのが日課。亡くなる4年前には、取材で1936年当時のエピソードをすらすら語るほど記憶力も会話力も優れていた。

「百寿者で認知症でない方は、大抵新聞を読みます。小説や本も読む。分からない漢字があると練習して覚える方もいます」

 読書は、目で文字を追い、手でページを繰って前後の文脈を把握しながら読み進める。漫然とテレビを見るのとは、脳への刺激が違う。
 プロスキーヤーの三浦敬三さんは101歳で他界する直前まで足腰の鍛錬を欠かさなかった。

「認知症にならない方は最低1日30分の外出を習慣にして、地域の人や友人と話したり、買い物したりして、刺激をたくさん受ける。『外出』という言葉の奥には、足腰の強化だけでなく、認知症を回避する多くの要素があるのです」

 三浦さんは90代になってから、主食を白米から玄米に替えたという。

「白米より玄米、食パンより全粒粉パンの方が、血糖値の上昇がゆるやかで、糖の分解に必要なインスリンがほどほどで済み、すい臓への負担が少ない。認知症にならない方は、血糖値が上がりにくい食事が共通項。認知症を招く大きな原因が糖尿病なのです」

■長寿遺伝子のスイッチ

 ボケない100歳の食事は一日三食腹七分目。7割が乳製品を取り、総じて果物と魚を好む。

「少々の飢餓感がある方が、元気に生きる長寿遺伝子が働くので、腹七分目。乳製品を取る方が介護状態になりにくいという報告があり、実際、木村さんも大好きでした。果物に含まれるビタミンCも、魚に含まれるオメガ3脂肪酸も、体をサビから守る抗酸化力が強い。うつ病は認知症の誘引の一つですが、オメガ3脂肪酸は抗うつ力にも優れる。そんな食事の影響もあって、認知症にならない方はとにかく前向きです。体がどこか痛くても『今が一番幸せ』と口をそろえます」

 三浦さんは下戸でも、100歳になってから、特製黒ゴマドリンクに赤ワインを大さじ1杯プラス。赤ワインのポリフェノールを取り入れるためだ。「認知症にならない方は、年を重ねても探究心が衰えない」という。雑巾やアクリルたわしを手作りして、周りの人や市に配る百寿者もいた。常に手足を動かし、おしゃべりを楽しむような人が、認知症を遠ざけるのだ。