Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

がんと運動との関係 デスクワークで発症率が上がるのは?

仕事中は“健康ゆすり”/(C)日刊ゲンダイ

 寒くて外出がおっくうという人は少なくないでしょう。運動不足の生活が肥満を助長し、ひいては心筋梗塞や脳卒中を招きますが、がんとの関係についてはあまりなじみがないかもしれません。実は、デスクワークの時間が長い人ほど、がんも発症しやすいことが分かっているのです。

 北大のグループは20年にわたって12万人を追跡。座っている時間が長いほど肺がんを発症しやすいことを突き止めました。1日4時間以上座っている人は、2時間未満の人に比
べて肺がんの発症率が36%高かったのです。

 オーストラリアの研究グループは、大腸がんとの関係を調査。10年以上デスクワークを続けていた人は、デスクワークに就いたことがない人に対して大腸がんのリスクが2倍に上っています。一方、肉体労働の業種については、重労働は軽労働より大腸がんリスクが44%低かった。

 まだあります。スウェーデンのカロリンスカ研究所は、デスクワークの人はよく動く人より前立腺がんの発症リスクが3割高いと発表。毎日30~120分ウオーキングなどをする人は、運動時間が30分延びるごとに、前立腺がんの総リスクが7%、腫瘍が前立腺内にとどまる限局性がんのリスクが8%、進行がんのリスクが12%低下するという結果を得ています。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。