Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

がんと運動との関係 デスクワークで発症率が上がるのは?

仕事中は“健康ゆすり”/(C)日刊ゲンダイ

 このような傾向は、ほかのがんについてもあてはまります。乳がん、子宮内膜がん、肝がん、すい臓がん、胃がんのリスクも運動で低下。特にデータが豊富に蓄積されているのが、大腸がんと乳がんです。

 米国立がん研究所の報告によると、運動によって大腸、特に結腸がんのリスクは40~50%、乳がんは30~40%もリスクが低下するとしています。乳がんを発症しても、運動習慣がある人は、ない人に比べて再発率と死亡率が下がることも分かっています。

 IT化が進んだ今、デスクワークが長引くのは仕方ないかもしれません。それでも、出社してランチまで、昼休みから退社までというように座りっ放しは要注意です。「仕事帰りに歩けばいい」と思っても、デスクワークを続けたデメリットをチャラにできないことも判明しています。

 では、どうするか。仕事の合間、1時間に1回程度トイレに立つ。あるいは、貧乏ゆすりで脚を動かす。人前で脚をゆするのはマナー違反でも、周りに見えないように机の下でやる分には問題ないでしょう。いっそ“健康ゆすり”とでも名称が変わるといいのですが……。一連のデータから分かるように、がん予防にもまずは歩くことです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。