有名病院 この診療科のイチ押し治療

【花粉症の免疫療法】日本医科大学付属病院 耳鼻咽喉科(東京都文京区)

2年で7割が症状改善、3割が薬いらずに(日本医科大学付属病院の大久保公裕先生)
2年で7割が症状改善、3割が薬いらずに(日本医科大学付属病院の大久保公裕先生)/(提供写真)
2年間で7割が症状改善 3割が薬いらずに

 花粉症の治療法には「薬物療法」「手術(レーザーなど)」「免疫療法」がある。投薬や手術は、どこの耳鼻咽喉科でも行われているが、唯一、根治が期待できる免疫療法はある意味、テクニックが必要になる。

 同科は、2014年10月に保険適用になった「スギ花粉症の舌下免疫療法」を国内で最初に始め(2000年から臨床研究)、これまで高い治療成績を挙げている。同科の大久保公裕主任教授(顔写真)が言う。

「スギ花粉症の免疫療法をするにしても、患者さんの多くは2種、3種と他のアレルギー(花粉、食事、ダニ、ペットなど)を持っていることが多い。そのような場合は、他のアレルギーも同時に治療をしないとスギ花粉症はよくなりません」

 免疫療法は、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を少しずつ体内に吸収させ、アレルギー反応を弱めていく治療法。腕に注射する「皮下注射」と、エキスを舌の下の粘膜に垂らす「舌下」という方法がある。

 現在、国内で対応できる舌下のアレルゲンの種類は「スギ」と「ダニ」のみ。皮下注射はもっと種類は多いが、それでも対応できるアレルゲンは限られる。ところが同科で行う皮下注射は、ほとんどのアレルゲンに対応できるという。そこが他院の治療と大きく違う。

「イネやシラカバ、ネコなど国内にないものは、倫理委員会の承認を得て、海外のものを使って治療しています。大学なので海外から取り寄せたアレルゲンの費用は研究費などを使い、無料で患者さんに提供しています」

■脱落率は一般の半分以下

 いずれにしても、アレルギーが複数あれば皮下注射、もしくは舌下との組み合わせになる。皮下注射は外来通院で、最初の3カ月は週1回、その後の2カ月は2週に1回、以降は1カ月に1回注射する。舌下の外来通院は月1回で、それ以外は自宅で毎日1回、舌の下にエキスを垂らす。どちらもこの方法で2~3年治療を続ける。

「治療期間が長いので、面倒に思う患者さんには免疫療法は勧められません。それに、舌下は1日に2回、3回もやるとアナフィラキシーショックを起こす恐れがあります。ですから、すべての治療法をきちんと説明して、どの治療法が自分に合っているか十分理解してもらうことが大切です」

“やる気”のある患者でなければ免疫療法は続かない。治療を途中でやめてしまう免疫療法の一般的な脱落率は20%くらい。しかし、同科では皮下注射が5~10%、舌下は3%くらいという。

 免疫療法は単独よりも他の治療法と併用した方が改善率はいい。同科で、症状が強いときに薬を併用する患者の割合は最初の年が6割、2年目から3割に減るという。

「免疫療法の改善率は、治療開始から2年経過でみた場合、差はあっても7割は確実に症状が軽減して、薬が必要なくなります。そのうち、まったく症状が出なくなるのは3割くらい。ただし、やめると戻る患者さんもいるので、3年は続けてもらっています」

 薬剤費は3割負担で、舌下が1カ月分で1000円ほど、皮下注射は1本150円程度だ。

<データ>
 1910年に開設した日本医科大学の本院。
◆スタッフ数=常勤医師12人
◆年間外来延べ患者数(2016年)=2万8961人
◆免疫療法の患者数=舌下85人、皮下注射256人