医者も知らない医学の新常識

辛いものを食べると長生きする?

唐辛子の成分「カプサイシン」が多く研究されている(C)日刊ゲンダイ

 昔の日本人はあまり辛いものを食べませんでしたが、最近では「インド料理」や「中国四川料理」など、激辛の料理が人気を集めています。

 それでは、そうした激辛の料理は健康に良いのでしょうか? 唐辛子の成分として、研究が多くあるのは「カプサイシン」という物質です。辛いものを食べると汗をかきますが、これは主にカプサイシンによる代謝促進作用があるからです。

 辛いものを食べると胃腸が悪くなると考えがちですが、カプサイシンには胃の働きを活発にして胃を保護するような作用もありますし、腸については腸内細菌を活性化して、免疫を高めるような作用も報告されています。血圧も下げ、肥満を予防するという、生活習慣病の改善効果も報告されています。

 このように、良いことずくめのカプサイシンですが、そのデータは多くが動物実験などで、人間での信頼のおけるデータは最近まで存在していませんでした。そんな中、昨年の「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」という医学誌に、中国で1年当たりの人数で350万人以上という大規模な調査データが報告されました。これによると、ほとんど辛いものを食べない人と比較して、週に何回か食べる人は、「最大で死亡のリスクが14%低下した」という結果になっています。

 辛いものが苦手な人は無理に食べる必要はありませんが、辛いものを適度に食べる習慣は、そう健康に悪いものではなさそうです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。