「恐ろしさを理解していない人が多い」と専門医が指摘するのが、LDLコレステロール、別名、悪玉コレステロール(以下「LDL」)だ。昭和大学医学部糖尿病・代謝・内分泌内科学部門の平野勉教授に、絶対に押さえておきたいLDLのポイントを聞いた。
①肥満とコレステロールは関係ない
中性脂肪とコレステロールはどちらも脂肪の一種。中性脂肪が高いと肥満につながる。一方、高コレステロールは、肥満につながらない。
「中性脂肪は栄養素ですが、コレステロールは細胞骨格をつくる物質で、太っている・痩せているとは関係ありません」
②高LDLが怖い
LDLは冠動脈に蓄積されやすく、血管を硬くし動脈硬化を進行させる。その硬さは医療用ドリルで壊さなければならないほどで、その状態が続くと心筋梗塞のリスクが増す。心筋梗塞を予防したければ、高LDLを放置してはいけない。
③極めて危険なのは「LDL180以上」
LDL140(㎎/dl)以上で高コレステロール血症と診断されるが、180以上ならすぐに病院へ行くべき。
「3カ月間食生活の改善をしてもらい、180を下回らなければ、薬物治療が検討されます」
④140以上180未満は、「プラスアルファ」で治療方針が決まる
この場合「家族に心筋梗塞や狭心症、高コレステロール血症の人がいない」「糖尿病など生活習慣病が一つもない」「喫煙習慣や肥満がない」「中性脂肪が基準値以内」なら、食生活改善で基準値70~119を目指す。
⑤「LDL140以上プラス高中性脂肪」に注意
中性脂肪が高いと、低い場合より、動脈硬化が進行しやすい。
「中性脂肪がLDLを小型化し、冠動脈の細胞壁に入り込みやすく、蓄積しやすくします」
食生活改善で数値が下がらなければ、薬が必要と判断される。
⑥過去に心筋梗塞を起こしている人は別格
③~⑤は一度も心筋梗塞や狭心症を起こしたことがない人に当てはまる。心筋梗塞を起こしたことがある人は、再発予防のためにLDL70以下を目指さなくてはならない。薬はマストだ。
⑦「家族性高コレステロール血症」を見逃してはいけない
これは、遺伝子異常で血液中のLDLが細胞内に取り込まれず、血液中にたまる病気だ。小児の頃からLDLが高めで、心筋梗塞のリスクが、“家族性”でない人と比較すると13倍も高い。
「薬物治療がすぐ必要。最近小児でも薬物治療が許可されました」
小児の健康診断では一般的に、コレステロール値が項目に入っておらず、見逃されている人もいる。家系に心筋梗塞や狭心症の人がいるようなら、検査した方がいい。
⑧中性脂肪だけが高ければ、nonHDLコレステロールがカギに
LDLは基準値内だが、中性脂肪だけが高い場合、総コレステロールからHDL(善玉)コレステロールを引いた「nonHDLコレステロール」をチェック。130以下なら、中性脂肪が多少高くても心筋梗塞の心配はない。それより高ければ、中性脂肪を下げるために食生活の改善を。
⑨薬はやめられない
高LDLは、食事より体質が大きく関わっている。食生活の改善で数値が下がる人もいるが、そうでない人もいる。
「薬で数値は下がりますが、体質は変わりません。飲み始めたら、やめられません」
昨今、コレステロールに限らず薬全体への賛否両論が渦巻くが、薬によって高LDLから心筋梗塞へ移行する人は減っていることは確か。どちらの道を選ぶかは自分次第かもしれない。