がんと向き合い生きていく

治療は日々進歩 75歳未満の「がん死亡率」は減っている

(C)日刊ゲンダイ

 まずは、「がんの死亡者数が増えている」という現状についてお話しします。

 1981年以来、35年間もずっとがんは日本人の死亡原因の第1位で、全体死亡者の約30%を占めています。2015年は37万346人ががんで亡くなっていて、これは前年に比べ2243人増加しているのです。

 また、2016年に新しくがんと診断された方は100万人に及んだそうです(対がん協会報)。

「患者よ、がんと闘うな」などの著者として知られる近藤誠医師は、「日本では、がん患者は増え続け、がんによる死亡者も増え続けている。検診でがんが発見され、早期治療が功を奏するなら、なぜ、がん死が減らないのだろうか」と言っています。だから、検診は受けるな、治療も受けるなと言います。これは大きな誤解です。

 2006年、民主党(当時)の山本孝史議員が参議院本会議でがんにかかっていることを公表して「自分には時間がない」と訴え、がん対策基本法が全会一致で成立しました。策定された10年計画の目標は2つ。①「がんの年齢調整死亡率(75歳未満)の20%減少」、②「すべてのがん患者及びその家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の向上」です。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。