がんと向き合い生きていく

治療は日々進歩 75歳未満の「がん死亡率」は減っている

(C)日刊ゲンダイ

 それから10年が経ち、それでもがんの死亡者数は増えてきています。この計画は無効だったのでしょうか? そうではありません。“中身”を見ればそれがわかります。

 ①「75歳未満のがん患者の年齢調整死亡率を10年間で20%減らす」とした目標は、17%減まで達成できています。20%減のために掲げた「喫煙者の半減」と「検診率50%達成」はいずれも到達できていませんが、それでも75歳未満の死亡率は減っているのです。では、なぜ死者数は増えているのでしょうか。実は、この10年間で75歳以上の人口が急激に増え続けたことによって75歳以上のがん死亡者が増え、結果としてがん全体の死亡者の増加となったのです。

 たとえば、全国の約10分の1の人口を占める東京都では、2014年のがん死亡者の56.8%が75歳以上です。国や都道府県などでのがん対策は、75歳未満ではある程度功を奏してきたのですが、超高齢社会となって、全体のがん死亡者は増えてきた結果となったのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。