受診までの「応急処置」

【五十肩】入浴は短時間で済ませ市販の痛み止めでしのぐ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 肩が強烈に痛む整形外科領域の病気には「石灰性腱炎」や「腱板断裂」などがある。また、肩から胸にかけての不快感、冷や汗を伴うような痛みでは、狭心症などの心臓疾患の可能性がある。このような「安静にしていても肩が痛む場合」は早く受診した方がいい。

 しかし、我慢できないほどの痛みではないが、上着を脱ぐ時に痛い、エプロンの紐を結ぶ動作(腕を後ろに回す)で痛い、寝返りを打つ時に痛いといった肩の痛みは「五十肩」(肩関節周囲炎)の可能性が高い。とりあえず、どう対処したらいいのか。

 山田記念病院・整形外科(東京都墨田区)の長谷川伸医師が言う。

「五十肩は、関節を覆っている関節包の滑膜に炎症が起こる病気です。病期が『急性期』『慢性期』『回復期』に分けられ、急性期は炎症が強いのでお風呂は短時間にして温めない方がいい。痛みが強ければ、市販の痛み止め(消炎鎮痛薬)の飲み薬や湿布を使うのがいいでしょう」

 五十肩であれば、通常は発症から2週間目くらいで「慢性期」に入って、肩の痛みが治まり始める。この時点で痛みが軽減しないようなら、きちんと受診して原因をはっきりさせた方がいい。

「慢性期では炎症が治まるので痛みは和らぎますが、次第に関節包が硬くなって肩の動きが悪くなります。そのまま動かさないでいると肩の可動域が狭くなるので、無理のない範囲で少しずつ動かすことが大切です」

 炎症が治まれば、今度は肩を温めて血行を良くした方がいい。温めると痛みが和らぎ、動かしやすくなるので、肩のストレッチや運動はお風呂の後にでもやろう。「振り子体操」や「うちわ体操」は、肩関節の拘縮を予防する運動療法として整形外科でも指導される。

◆「振り子体操」…立ち姿勢でおじぎをした状態から、肩が痛い方の腕を垂らし、力を抜いて前後左右に振る

◆「うちわ体操」…肩の痛い方の肘を90度に曲げて、脇を締めてうちわを仰ぐように左右に振る 

 一般的には、発症から6カ月ほど経つと痛みがほとんど治まる「回復期」に入るといわれている。回復期に入っても、積極的に肩を動かすことが大切だ。

「ただ、実際には約半数の患者さんに痛みや関節の可動域制限が残り、10%は日常生活に支障を来すほどの障害が残ることが報告されています。発症時の症状が強いほど予後が悪いので、症状が強かったり、改善が悪かったりするようなら、きちんと受診するべきです」