あの話題の治療法 どうなった?

【歯科インプラント】人気治療「オールオン4」の不安材料

 国民生活センターが「歯科インプラント治療に係る問題」とした報告書をまとめ、治療の問題点を指摘して5年余り。この間、インプラント治療を手掛ける歯科医師の技量不足や衛生管理といった問題点がクローズアップされた。いまだに歯科インプラント人気は低迷している印象があるが、実際はどうか? 都内でインプラント治療を中心に歯科診療を続ける歯科医師に聞いた。

■負担は少ないが…

「患者さんは戻ってきていますが、以前ほどの賑わいはありません。インプラント治療の勉強会に出席する歯科医師はベテランが中心。大学でインプラント治療の授業を受けた若い歯科医師は、リスクを伴うインプラント治療を敬遠して、ブリッジや入れ歯に専任する人が多いようです」

 歯科インプラントは歯周病などで失った歯の部分にチタン製の人工歯根を埋め込み、その上に歯冠をかぶせる治療法。周囲の歯に負担をかけず、見た目も自然に近いことから富裕層に人気がある。

 しかし、インプラントを埋め込む際、歯科医師の技量不足から神経を傷つけ、唇やあごがしびれたり、感染症にかかることもあるという。

「インプラント治療にはさまざまなやり方がありますが、人気のひとつに『オールオン4』『オールオン6』と呼ばれる治療法があります。総入れ歯やほとんど自分の歯が残っていないという方が対象で、顎の上下それぞれにインプラントを4本または6本埋め込み、その上に入れ歯を装着するという方法です」

 総入れ歯に比べてしっかり噛めるうえ、総インプラントに比べて埋め込むインプラントの数が少ない分、安い。治療期間や回数が少なくて済み、体にかかる負担も少ないという。

「ただし、通常のインプラントと違って深く、斜めに埋め込むため、一本一本に応力がかかり、インプラント歯周炎になりやすい。そうなるとインプラント自体がダメになる可能性があります」

 それを避けるには術後の定期検診は当然として、歯科医師の手術技術が必要。経験・知識の乏しい若手歯科医師には難しいが、“少しでも費用を安く上げたい”との患者のニーズに応えようとして、自分の力量以上の技術が必要な患者に施術するケースも少なくないという。

「インプラントを埋め込むには、患者さんの顎の骨量を増やさなければならない場合がある。そのときどうすればいいのか、その際の生物学的リスクはなにか、多くのインプラント治療法の中からどの治療法を選ぶか。歯科医師は普段からよく勉強して最新の知識を絶えず吸収し、技術を学ばなければ判断できません。いくら歯科医師がインプラントへの信頼回復を訴えても、利潤を追求するメーカー主導の講習会に数日出席しただけで、簡単にインプラント治療を始められる現状を変えない限り、新たな“問題”発生の可能性は残ります」