ノロウイルスは冬になると流行し、激しい下痢や嘔吐に加え、高熱にうなされることもある厄介な胃腸炎だ。子供や高齢者が感染すると、最悪の場合、死ぬこともある。上からも下からも“垂れ流し状態”で、ちょっと水を飲んだだけでトイレに直行……。
そんなつらさから下痢止めや吐き気止めを飲みたくなるが、飲まない方がいいという。聖路加国際病院内科名誉医長で、「西崎クリニック」院長の西崎統氏が言う。
「下痢止めを飲みたくなる患者さんの気持ちはよく分かりますが、飲んではいけません。吐き気止めもそうです。それらの薬でウイルスの排出が抑えられると、治癒が遅れてよけいに症状が長引くことになります。症状がつらくても、とにかくウイルスを体の外に出すのが正解です」
■できるだけ水分摂取を
理屈は分かるが、食事はおろか水も飲めないのはきつい。何度も続く下痢でお尻はヒリヒリだ。そんなピンチをどうやって乗り切ればいいのか。
「大事な見極めは、水を飲めるかどうか。下痢や嘔吐を恐れて水分摂取を避けがちですが、そうすると脱水を招く。ノロウイルスの感染で、子供や高齢者が亡くなるのは、脱水によるケースがほとんどなのです。下痢や嘔吐がつらくても、スプーンにすくった水をなめる程度でいいので、少しずつ水分を補うこと。それも無理なら、受診して点滴を受けるといい」
受診したくても、断続的に襲ってくる下痢で通院さえ危うい。タクシーに飛び乗っても、病院までお腹が持つかどうか。頼りになる薬はないか。
「特効薬や予防のワクチンはありませんが、整腸剤が役に立ちます。ノロに感染すると、腸内細菌のバランスが悪玉に偏るので、整腸剤で善玉優位になるように環境を整えるのです。間接的な治療ですが、飲まないより回復が早まります」
ドラッグストアなどで整腸剤を買って、常備しておくといいかもしれない。