運動習慣がない人が始めるべきは“ケガ軽減”エクササイズ

まずは8通りの快適エクササイズを
まずは8通りの快適エクササイズを(C)日刊ゲンダイ

 体が重い――。こう感じた経験がある人は多いだろう。原因は「筋力の少なさ」だ。

「筋力」とは、物を持ち上げたり、支えたり、引っ張ったりする「筋肉が発揮できる力」を指す。基本的に、筋力は筋肉量と一致している。

「しかし、慢性的な症状やストレス、運動不足などがあると、筋肉量と筋力が一致しません。つまり、もともと持っている筋肉をしっかり使えず、筋力が出ないことで体を支えられないのです。すると、体重にかかわらず、体が重い、だるいと感じるのです」

 こう話すのは、「セラピー&フィットネスViPro」の早川庫輔氏(理学療法士)。先日開催された「更年期と加齢のヘルスケア学会」のセミナーでのことだ。

 筋力低下の直接の原因は、背骨のバネのようなしなやかさが失われていることにある。運動は健康維持に欠かせないが、運動で力を出すと、同じだけの力が体に返ってくる。それをしなやかな背骨が吸収することで運動が成立する。

 ところが、背骨の働きが落ちて吸収力が低下すると、筋力を出さないように脳が制限をかける。吸収できる範囲以上の力がかかるとケガをするからだ。筋力が制限されたまま運動をしても効果が出づらく、そのまま無理に行おうとするとケガのリスクが高くなる。

■ポイントは3つ

 では、運動する前に何から始めればいいのか?

 早川さんによれば、ポイントは「失った背骨のしなやかさを取り戻す」「筋力の制限を改善する」「もともと持っている筋肉がしっかり働くようにする」の3点。これらを押さえたエクササイズがある。

①背筋を伸ばし、両手を上げて頭の後ろで交差し、細く長くなるイメージで真上に伸びる。7秒間×3回。

②右手を上げ、背骨が弧を描くイメージで左側に倒し、右の脇腹を伸ばす。しっかり伸ばしたところで7秒間キープ。反対側も同じようにする。

③イスに浅めに座り、手を前に出し、両方の手を内側にねじり、背中をしっかり丸める。息を吐きながら、手と背中が遠くなるイメージで7秒間キープ(写真A)。その後、息を吸いながら手のひらを上に向けて肘を引き、背中を反らせて7秒間キープ。

④イスに座り、右足を上にして足を組む。体を右側にねじって7秒間キープ。猫背にならないように、呼吸を止めないように行う(写真B)。足を組み替えて同じようにする。

⑤イスに座り、右足を上にして足を組む。左足の膝と爪先は正面に向ける。その状態を保ち、上半身を前に倒す。股関節やお尻まわりの筋肉が伸びて気持ちの良いところで7秒間キープ。足を組み替えて同じようにやる。

⑥イスに浅めに座り、左足は90度に膝を曲げたまま、右足を伸ばす。背筋を伸ばして、上半身を前に倒す。太ももの裏とふくらはぎが伸びるのを意識し、7秒間キープ。反対側も同じようにする。

⑦イスに座ったまま、腰を同じ方向に5~10回大きく回す。左右両方する。

⑧シコを踏むような体勢を取る。背筋を伸ばし、猫背にならないように気を付け、体を真っすぐ起こしたままで腰を下ろす。股関節が伸びるのを感じながら10秒間キープ。膝と足の爪先が同じ方向を向くようにする。

 運動習慣に関する調査では、男女ともに20~40代は運動習慣がある人が少なく、50代以降増え始めるという結果が出ている。しかし、たとえばジョギングをいきなり始めて健康になれるのは、ずっと何らかの運動を続けてきた人なのだ。これまで運動習慣がなかった人は、本格的に運動を始める前にやることがある。

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