医者も知らない医学の新常識

「恋愛するとボケない」は本当か?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「高齢者でも恋をしているとボケない」というような話はよく聞きます。本当にボケ予防になるかどうかはともかくとして、“老いらくの恋”というのは、その人を元気にすることは確かなようです。しかし、そこに科学的根拠のようなものはあるのでしょうか?

 確実とは言えませんが、そうした研究も発表されています。昔は「大人になると脳の細胞は増えることはない」と考えられていましたが、最近の研究では「一部の脳細胞は大人になってからも増加する場合がある」ことが分かっています。その代表は記憶に関わる海馬という箇所の脳神経細胞で、その神経の再生に必要なのが「神経栄養因子」と呼ばれるタンパク質です。その中でも神経成長因子という物質は、認知症の進行とともに低下することが知られています。

 2006年のイタリアの研究者の発表では、「熱烈に恋をしている男女の血液中では、恋をしていない人よりも多くの神経成長因子が存在している」ことが報告されました。この神経成長因子の増加は、恋愛が1年以上続いた安定期になると、もう恋愛をしていない人と同レベルに低下していました。つまり、恋愛の初期には神経成長因子が脳で増加し、脳を活性化させている可能性があるのです。

 これは一時的なものなので、それでボケ予防になるというのは言い過ぎですが、恋愛が脳を活発にする活動であることは間違いないようです。

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。