がんと向き合い生きていく

<2>検査を受けて晴れ晴れとした気持ちになれた

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 白衣を着ている時の自分とは違って、いよいよ検査するとなると、すっかり患者になっています。「つらい時は手で合図してくださいね」「はい、ごっくん、ごっくんして。はい、上手ですよ……」といった内視鏡医や看護師さんからかけられる言葉に対しても、普段は気づかない優しさが身に染みます。患者である私もモニター画面に映る自分の胃を見ながら行った検査でしたが、「胃の膨らみもよくて、潰瘍もありません。大丈夫ですよ」との診断でした。

 検査が終わった直後から、すっかり晴れた気持ちになりました。あの胃のあたりの重苦しさがまったくなくなって、いつもの元気な白衣の自分に戻れたのです。

 家に帰って、夕食をたくさんとる私に妻が言いました。

「心配させて……。お父さんは、検査の結果がいいと症状はすぐなくなるのよね。医者じゃないみたい」

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。