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首都圏の精神系医師 最少エリアは埼玉県南部・南西部

(C)日刊ゲンダイ

 精神系(精神科・心療内科)の医師数は、全国で約1万6000人。人口1万人当たり1.27人という割合です。首都圏は東京都(1.65人、全国11位)を除き、精神系医師が少ない地域です。神奈川県が31位(1.12人)、千葉県が42位(0.97人)、埼玉県が46位(0.83人)となっています。もちろんエリアによって大きなバラつきがあります。ただし市区町村で見てしまうと、大きな精神科病院がある自治体などが突出してしまいます。そこで今回は「2次医療圏」で見ていくことにします。

 2次医療圏とは医療行政上の地域割りのことです。厚労省では、各都道府県をおおよそ5~10の2次医療圏に分け、それぞれの医療圏で住民の医療ニーズをまかなえるように、病院や医師数を整備しようとしています。ですから精神系の医師数も、建前上は大きな格差がないはずです。

 そこで、2次医療圏ごとの人口1万人当たりの精神系医師数を計算すると、〈表〉のようになりました。

 もっとも多い東京都中央部は、全国平均の約3.7倍も精神系医師が集まっていることになります。この医療圏は千代田区・中央区・港区・文京区・台東区の5区で構成されています。大学病院や有名病院が数多く集まっているため、医師数そのものが全国でもっとも多いエリアです。

 また中央省庁や大企業の本社、大学などが集まっているので、精神の問題を抱えたサラリーマンや学生が集まりやすいのです。精神系にとって「商売」に適した土地といえます。

 精神系の患者は大きく2通りに分かれます。うつ・発達障害・統合失調症・拒食症などを抱えた比較的若い世代の患者と、高齢の認知症患者です。徘徊や暴力など問題行動の多い患者は、主に精神科が担当します。都内の精神系医師たちは、どちらかといえば若い世代を診る機会が多いはずです。多摩地区は高齢化が進んでいるので、認知症患者を診ることのほうが多いでしょう。

 精神系医師がもっとも少ないのは、埼玉県南部と南西部。埼玉県は人口当たりの医師数が全国最下位。精神系医師が少ないのもうなずけます。若い世代が多いエリアなのですが、患者のなかには、越境して都内の病院に通う人が少なくないに違いありません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。