病院は本日も大騒ぎ

手術後の大部屋で起こっていること

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 22歳で看護師になり、現在、関東圏の総合病院に勤務して看護師歴30年近くになるトミ子です。

 看護師になりたての頃は毎日が驚きの連続でしたが、いまは何が起こっても大声を出すようなことはありません。慣れたというか、肝が据わりました。

 最近は、一般病棟でも血圧や酸素濃度などを24時間モニタリングできるようになりました。そのため、昔と違って手術後の患者さんも一般病室で過ごすことになります。そのせいで、大部屋ではカーテン越しにさまざまなドラマが生まれます。

■食事中の臭い

 手術後の痛みに耐えている患者さんの横で、患者さんが亡くなって遺族が泣き崩れていたり、急変した患者さんの元に医師や看護師が集まってきたりといったように大騒ぎです。手術後の患者さんは、「オレもこの後、ああなるのか」と思うようで、申し訳ない限りです。

 中には笑える話もあります。手術をした直後、排泄は寝たまま行ってもらいますが、少し気の毒に思うのは、隣に寝ている患者さんです。ベッドをカーテンで仕切っているとはいえ、排泄は時間を選びません。たまたま昼食中に、隣のベッドで少し遠慮気味にウンウンといううなり声が……。やがて部屋に立ちこめる臭いに、隣の患者さんは箸を止めてしまいました。

 私は、昼食を途中で止めた患者さんの耳元で「ごめんなさいね」と、笑顔でささやきましたが、病院で唯一の楽しみといえる食事の時間をジャマされたのですから、患者さんの腹立ちは収まりません。あとでおまんじゅうの差し入れをして、機嫌を直してもらいました。

■患者さんの失踪

 また、私が夜間勤務のとき、認知症の患者さんが突然ベッドから消えたことに気がつきました。いつも監視はしているのですが、手術を受けたばかりの別の患者さんの方を気にしていたため、注意がおろそかになっていたのです。

「いない!」と焦って、手が空いている看護師さんに協力してもらい心当たりの場所を捜しました。まず他の病室に行ってないか、同じ階にあるすべての病室を訪ね、トイレもくまなく捜しました。さらにロビー、屋外に出て病院の周囲も捜しましたが、見つかりません。

「まさか」と思い、浴室を確認したところ、カーテン越しに、パジャマを脱いで浴槽の中に入っていた患者さんを発見しました。幸い、浴槽にお湯を張っていなかったので助かりましたが、本人はお風呂に入りたかったのかもしれません。浴槽から出す際、患者さんの腕に擦り傷を見つけました。医師を呼んで処置をしてもらいましたが、本当に認知症の患者さんからは目を離すことができません。

 その患者さんの元には、ご家族が毎日のように面会にきますが、そのたびに「私、今日退院するからね」と、急いで着替えようとします。その説得をしたり、なだめる役も私たちの職務です。