閉経後リスク上昇 20年で4倍「女性の痛風」が増えた理由

女性の痛風患者が増えている
女性の痛風患者が増えている(C)日刊ゲンダイ

 血液中の尿酸値が高い高尿酸血症(7㎎/dl以上)の状態が4~5年以上続くと、足などの関節が腫れて激痛が起こる。これが「痛風」だ。本来、女性には起こりにくい病気とされてきたが、近年は女性の発症が増えているという。山田記念病院・整形外科(東京都墨田区)の長谷川伸医師に聞いた。

■閉経以降に発症リスクが高まる

 痛風患者全体に対する女性患者の割合は、1992年の東京女子医大の調査によると約1.5%。ところが2013年の厚労省・国民生活基礎調査データでは、女性患者の割合は約6%(男性99万人、女性7万人)と約20年で4倍に増えている。

「以前は女性の痛風発作を診たことはありませんでしたが、ここ1年で50~60歳代の女性の痛風発作を2例経験しました。また、高齢女性(75歳以上)の尿酸値の高い人をよく見かけるようになりました」

 女性が痛風になりにくい理由に女性ホルモンのエストロゲンがある。体内の尿酸は、腎臓で尿中に排泄されるものもあれば、再吸収されるものもある。エストロゲンには腎臓での尿酸の再吸収を抑え、尿酸の尿中への排泄を促す。一方で、男性ホルモンのテストステロンは尿酸の再吸収を促進する。そのため女性の尿酸値の平均値は、男性(5.5㎎/dl)に比べて1.5㎎/dl低いという。

「ただし、『尿酸は悪者』という考えは間違いです。体内で抗酸化物質として機能している可能性があり、アルツハイマー病を防いでいるのではないかともいわれています。男性は女性に比べて筋肉量が多く、体内が酸性に傾きがちのため抗酸化物質である尿酸が多く存在すると考えられています」

 このため、女性の痛風発症リスクが高まるのは、エストロゲンの分泌が低下する閉経以降となる。

■「甘党・お酒好き」は要注意

 女性の痛風増加の原因は、加齢による閉経女性が増えていることもあるが、生活スタイルの変化の影響も大きいという。59歳の看護師のA子さんは大のお酒好き。種類問わず、毎日晩酌をしていた。体形は中肉中背で、ひどい肥満ではない。52歳の検診で高尿酸血症(7・3㎎/dl)を指摘されていたが、放置。7年後に痛風を発症した。

 これが典型的なケースだ。

「働く女性が増えることで、ストレスやアルコール摂取量の増加、食生活の乱れ(欧米化)などによって、女性の痛風が増えていると考えられます。とくに高齢女性は、水分摂取量の低下、むくみや高血圧治療の利尿薬の常用によって、脱水傾向になることが発症要因になります」

 尿酸のもとになるプリン体は、8割が体内(細胞代謝など)で作られ、2割が食事で体内に入る。

 食事での摂取は多くないが、スイーツ(ショ糖、果糖)やアルコールの取り過ぎはプリン体の有無にかかわらず尿酸値を上昇させる。肥満があってもインスリンの分泌が増えて、尿酸の排出を抑制するという。

「尿酸値を下げるには、野菜や海藻類、牛乳やヨーグルトなどの乳製品を積極的に取ることです。乳製品に含まれる『カゼイン』が分解されると『アラニン』になり、尿酸の排泄を促進します。乳製品は低脂肪のものがより効果的です」

 夫婦は食生活や生活習慣が似る。痛風経験のある男性は、妻の発症にも注意しておこう。

関連記事