当事者たちが明かす「医療のウラ側」

がん治療 キイトルーダの方が効くと言われるのはなぜか?

(提供写真)
都内の50代開業医

 いよいよ、オプジーボに続き、キイトルーダと呼ばれる抗PD-1抗体製剤が使えるようになりました。中央社会保険医療協議会総会で、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対して1日薬価3万9099円が決定したのです。同時に、それに関連する検査(PD-L1タンパク免疫染色病理組織標本作成)やオプジーボ、キイトルーダを使用できる医療施設や投与対象患者、そのための注意事項などをまとめたガイドラインも承認されたそうです。

 がん細胞の表面にはPD-L1と呼ばれる分子があらわれ、キラーリンパ球の内側にあるPD-1とくっついて「殺すな」という信号を発します。このPD-L1が大量に発生していれば、がん細胞は殺されずどんどん大きくなっていきます。

 それを阻害するのがキイトルーダやオプジーボです。本来、どちらも、効果が変わらないはずなのにキイトルーダの方が効果がある、と考えられています。なぜなのでしょうか?

 それは薬の承認の過程の差です。オプジーボは非小細胞肺がんでの認可を受ける際、抗がん剤治療を受けて効果がなかった患者さんを対象にしてその効果を証明しました。その後、抗がん剤を使わず最初からオプジーボを使ったときの効果を証明しようとしましたが、失敗しました。

 その結果、オプジーボは抗がん剤である程度がん細胞が弱った肺がんでなければ効かないと考えられたのです。

 一方、キイトルーダはがん細胞の表面のPDーL1の発現率が50%以上の患者さんだけを集めて治験をした結果、抗がん剤治療をしていない患者さんに最初から投与しても肺がんの進行を抑え、延命効果もある、という結果を残したのです。

 おかげで、キイトルーダはオプジーボと違って、最初の治療から投与しても効果がある、との評価を得たのです。

 つまり、薬本来の機能にそれほど大きな違いがあるわけではないということです。

 当然、キイトルーダもオプジーボと同じような副作用が出ることを忘れてはなりません。使用を検討している人はそのことを知っておくことが大切です。