医者も知らない医学の新常識

虫歯菌が脳出血の原因なのか

虫歯は「ミュータンス菌」という細菌による感染症/(C)日刊ゲンダイ

 虫歯は「ミュータンス菌」という細菌による感染症で、通常は口の中だけの問題だと考えられています。ところが、「虫歯が多いと脳卒中の危険性が高まる」という複数の報告があります。その原因は不明ですが、ある日本の研究グループは、「特殊な虫歯菌が血液から脳に入り込み、脳の血管の内側にくっついて、そこで病気を起こし、血管をもろく出血しやすい状態に変えるのではないか」という興味深い仮説を提唱しています。

 これが、コラーゲン結合タンパク質を持つミュータンス菌です。コラーゲンというのは体の中にある繊維で、歯の象牙質という部分にあり、血管の壁の中にもあります。ミュータンス菌が、このタンパク質を持っていると、血管の壁にくっついて、そこで炎症を起こす可能性があります。細菌が結合した血管はもろくなり、出血しやすくなると考えられているのです。

 最近の研究では70歳くらいの成人279人の調査で、4分の1の人がコラーゲンに結合しやすいミュータンス菌を持っていて、持っていない人と比べて「14倍以上も認知症につながるような小さな脳出血が起こりやすかった」という結果が報告されています。

 ミュータンス菌が人間の脳で見つかっているわけではないので、虫歯が脳出血の原因とはまだ言えません。ただ、研究が進めば、「脳を健康に保つためには虫歯を予防しよう」という時代になるかもしれません。

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。