本格的な花粉症の季節がやってきた。今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は、昨年と比べて4.4倍と見込まれている。くしゃみ、鼻水、目のかゆみ、涙といったつらい症状に悩んでいる人も多いだろう。中でも注意すべきなのが「目の充血」だ。
この季節になると、「花粉症で目が充血している」と思っていたら、実は違う病気だったというケースが増えるという。花粉症と勘違いしやすい目の充血を伴う病気について、杏林大学医学部杏林アイセンターの山田昌和教授に詳しく聞いた。
①ウイルス性結膜炎
ウイルスに感染して起こる結膜炎で、アデノウイルスによるものがよく知られている。
「夏にプールで感染するイメージが強いのですが、一年中見られます。目の充血、目ヤニ、涙といった花粉症に似た強い症状が表れます。多くは発病後10日ぐらいで症状が軽くなりますが、感染力が非常に強いので注意が必要です。風呂や洗面所で使っているタオルをはじめ、ドアノブ、吊り革、エレベーターのボタンなどを介しても感染します。花粉症だと勘違いして放置していると、あちこちで感染させてしまう危険があります」
花粉症による充血との見極めは簡単ではないが、“手がかり”はある。結膜炎の症状は一般的に、最初は片目に発症し、1~2日で両目に表れる。さらに、2~3日でどんどん症状が悪化する。
「花粉症は最初から両目が充血する場合が多く、急激に悪化することも少ないといえます。症状の表れ方がいつもと違うと感じたら、眼科を受診してください」
②黄砂によるアレルギー性結膜炎
花粉症シーズンと中国大陸からの黄砂が飛来するタイミングが重なると、勘違いする患者が多くなる。黄砂の粒子やゴミが目の中に侵入すると、充血したり、ゴロゴロとした違和感を覚え、さらにはアレルギー性結膜炎を起こしたり、角膜に傷がついて細菌に感染しやすくなってしまう。
「通常は放置していても黄砂は涙で流され、傷も徐々に修復されていきます。しかし、花粉症と黄砂が重なると、花粉症が治りづらくなって症状が長引く傾向があります」
③コンタクトレンズ使用による角膜感染症
花粉症の患者がコンタクトレンズを使用していると、症状が強く表れる場合が多いという。花粉がレンズと目の間に入り込んで、症状を悪化させるからだ。
「そうした状態が続くと、角膜を傷つけて表層角膜炎を起こすケースがあります。また、角膜に傷がつくとブドウ球菌や緑膿菌などの細菌が侵入しやすくなるので、角膜感染症を起こすリスクも高くなります」
■失明を招く病気の可能性も
角膜感染症になると、強い目の痛み、異物感、充血などの症状が表れる。これを花粉症と勘違いして放置していると悪化を招き、細菌が繁殖して黒目が白く濁って視力が低下したり、失明するケースもあるという。
「花粉症の季節になると、花粉症だと思い込んでいた患者さんが増えます。初期の頃は痛みがそれほど強くないので、様子を見ているうちに1~2日で急激に悪化させてしまうのです。『しばらく花粉症の目薬をさしていたが、良くならないから』と受診される患者さんもいます。花粉症の点眼薬は抗アレルギー薬なので、細菌感染には効果がありません。効かない薬を使っているうちに受診が遅れて、悪化させてしまうのです」
花粉症シーズンはメガネにするのが無難。コンタクト使用中に目に違和感があれば、外して様子を見る。一晩経っても症状が改善しないようなら、受診した方がいい。
④その他
ぶどう膜炎や緑内障といった深刻な病気も充血を伴うケースがある。いずれも、治療が遅れると失明する危険があるから要注意だ。
「ぶどう膜炎は充血の他に、目が痛い、かすむ、まぶしい、歪んで見えるなどの症状が表れます。緑内障は急激に眼圧が上がって急性の緑内障発作が起こったときに充血します。こちらも、痛み、かすみ、まぶしさといった症状が出ます」
頻繁にあるケースではないというが、充血だけでなく痛みやかすみがあれば、花粉症ではなく深刻な病気の可能性もゼロではないと覚えておきたい。