当事者たちが明かす「医療のウラ側」

高齢者にダイエットは必要ない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 私の医院に30年以上通っておられる80代のご婦人がおられます。昔から「ダイエットしなくちゃ」が口癖です。

 確かに年齢の割に大柄なこのご婦人は、豊かなお腹をしていますが、血液検査をしても問題なし。体重オーバーな方が痛めやすい膝にも問題はありません。私は「あなたに減量は必要ありませんよ」と言うのですが、「見た目が悪い」という一点だけでダイエットの必要性を感じているようです。

 実はこういう高齢者は少なくありません。しかし基本的に高齢者が重要視すべきは現状維持であり、ダイエットを気にする必要はありません。むしろ、気をつけたいのは、やせによる低栄養です。

 その意味で高齢者は毎日体重を量ることが重要です。思い当たる節がないのに体重が減ったということになれば、健康に問題があるということであり、低栄養を警戒しなければなりません。

 ある先輩医師によると、太り気味の高齢者は肥満度を示す体格指数(BMI)を気にし過ぎない方がいいとのことです。なぜなら、高齢者は脊椎の圧迫骨折などで背が縮み、5~10センチ低くなるケースがザラだからです。

 そうなると、体重は変わっていなくてもBMI値だけが高くなる。そこで「ダイエットをしなくちゃ」との強迫観念が生まれ、低栄養を起こしてしまうのです。

「食べ過ぎでちょっと体の動きにキレがなくなった」というのなら、少しだけ食事に気をつければよいだけ。無理してダイエットをする必要はないのです。