天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

花粉症で呼吸しづらくなると心臓の負担が増大する

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 呼吸がしづらくなって、肺が十分な酸素を血液に取り込めなくなると、心臓から肺に流れる血流が制限されます。心臓は肺に血液を送るためにそれだけ大きな力が必要になり、負担が増えるのです。特に、不整脈が出やすくなります。

 また、花粉症の患者さんは睡眠時無呼吸症候群(SAS)にかかりやすくなります。夜、寝ている間に何回も呼吸が止まる病気で、低酸素状態を繰り返したり、交感神経を活性化させることなどによって、心臓、脳、血管に大きな負担がかかります。そのため、SASがあると、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞といった重大な合併症や、高血圧、心房細動が起こりやすくなるのです。

■生体リズムの乱れやストレスも悪影響

 呼吸だけでなく、花粉症によって免疫力や抵抗力が低下したり、花粉症の症状でストレスを感じていると、自律神経のバランスが崩れやすくなります。人間は、交感神経が興奮すると心拍数が増加したり、血圧が上昇します。反対に副交感神経が興奮すると心拍数が減少し、末梢血管が拡張します。自律神経である交感神経と副交感神経が互いにバランスをとって、循環器をコントロールしているのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。