役に立つオモシロ医学論文

精神的につらいと「がん死リスクが増加する」は本当か?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 研究の結果、精神的苦痛の小さい人たち(0~6点)に比べて、精神的苦痛の大きい人(7~12点)では、あらゆるがんによる死亡が1.32倍、統計学的にも有意に多いという結果でした。がんの種類別の解析では、大腸がんによる死亡が1.84倍、前立腺がんによる死亡が2.42倍、すい臓がんによる死亡が2.76倍、食道がんによる死亡が2.59倍、血液のがんである白血病による死亡が2.59倍、統計学的にも有意に多くなっています。

 この結果はあくまで観察的な研究データに基づいているので、精神的な苦痛とがん死亡の直接的な因果関係を決定づけるものではありません。

 ただ、健康面に及ぼす精神的苦痛の影響は軽視できないように思います。

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青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。