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【助産師が支えるお産】湘南鎌倉バースクリニック(神奈川県鎌倉市)

分娩台を使わない出産(左は湘南鎌倉バースクリニックの日下剛院長)
分娩台を使わない出産(左は湘南鎌倉バースクリニックの日下剛院長)/(C)日刊ゲンダイ
分娩台を使わない出産

 徳洲会グループの基幹病院である湘南鎌倉総合病院・産婦人科の「ローリスク出産」専門施設として昨年5月にオープン。本院とは、直線距離にして約2キロ離れたところにある。どうして本院と分離されているのか。同クリニックの日下剛院長が言う。

「分娩台を使わないフリースタイル出産は1990年代から本院で取り入れてきましたが、その頃から『周囲環境がお産の経過に影響を及ぼすのでは』と考えていました。病院特有の緊張感のある環境は、出産の正常な進行に悪影響を与えます。それで、合併症があったり、帝王切開が必要となりそうな妊婦さんは本院の『お産センター』で、できるだけ生理的なお産を目指す妊婦さんは当院でと役割分娩を始めました」

 本院とはカルテを共有していて、妊婦に何か異常があれば緊急対応ができる体制が取られているという。

「出産準備プログラムでは『愛情ホルモン』と呼ばれるオキシトシンについて学習してもらいます。女性の生涯でオキシトシンが最も分泌されるのは出産直後で、その働きは出血を止めることと、産んだ赤ちゃんを好きになる指令を出させることです。それらの働きが円滑に機能する心の状態について学んだ上で、お産に臨んでもらいます」

■床に布団、天井からロープ

 従来のお産は分娩台を使用する・しないにかかわらず、頑張って産むイメージがあるが、オキシトシンを考慮したお産では、「自分の楽な姿勢で、できるだけ考えないで本能的に過ごす」ということが尊重される。2室ある分娩室には床に布団が敷かれ、丸い大きなクッションが置かれ、天井からロープが下がっている。そこで、横向きに寝たり、しゃがんだり、四つん這い、ロープをつかむなど、自分が楽なさまざまな姿勢で出産する。必ず2人以上の助産師が立ち会うという。

 不要な医療介入(浣腸、剃毛、会陰切開、陣痛促進剤や点滴の投与など)をできる限りしないのも特徴で、同院では陣痛の痛みを麻酔で和らげる無痛分娩は行っていない。それは「子供を残す過程において、陣痛は円滑な愛情形成に関わっている可能性がある」という考えからだ。海外の動物実験では、無痛分娩をした羊は子育てをしないという研究報告がされているという。

 入院中の部屋は、全室個室で「スタンダード」と「スペシャル」の和室と洋室があり、分娩費用は6日間60万円(税込み)~。家族の宿泊(別料金)も可能だ。

「出産前後は安心感があってリラックスできることが大切なので、お部屋は家庭的な内装になっています。食事は専属シェフが体調回復を早め、母乳が出やすくなるように配慮したメニューを提供しています」

 院内には、アロママッサージサロンが常設され、入院中1回は無料で受けられる。妊娠中の学習プログラムには、有料で「マタニティ・ヨーガとビクス」「母親・両親学級」「料理教室」などがあり、「歯科検診」(週1回)や産後ケアの「育児サロン」(月2回)は無料だ。