薬には消費期限があるため、もったいないからといって残った薬、特に開封済みの薬をとっておくのは危ない――。前回、お話ししたテーマを続けます。中でも、ため込みやすい薬のひとつが塗り薬でしょう。患者さんからは、「汚れない(汚染されない)から問題ない」「1回に塗る量が分からないから余ってしまう」といった理由をよく聞きます。
しかし、薬自体を素手で触れば汚れますし、“軟膏ツボ”に入っている薬であればなおさらです。対策としては、薬をすくい取る際は素手ではなく、綿棒などを使用すれば汚染は少なくなります。1回に塗る量に関しては、薬局では「1日何回塗ってください」といった説明はされても、1回にどれくらい塗るかについては「適量」と言われることが多いのではないでしょうか。
実は塗り薬の適量は、「FTU(フィンガー・チップ・ユニット)」という単位で決められています。大人の人さし指の一番先から第一関節までの上にのる量(チューブから絞り出した量)のことで、約0.5グラムに相当します。ローション剤であれば、「1FTU」=「1円玉大」となります。
その1FTU分の薬を手のひら2枚分の広さまで塗り広げるのが「適量」とされています。保湿剤であれば「塗った後にティッシュペーパーをのせて落ちない程度」がよく、ステロイド剤であれば「炎症が起きている部位だけに塗るのがよい」ともされています。
また、患部にゴシゴシすり込むのではなく、優しく塗ってください。さらに、炎症症状がある場合はしっかり治療して、徐々に薬を減らすのが適正とされています。怖がって薬を少量しか使わないと、治るものも治らなくなってしまいますので要注意です。
処方される塗り薬の量は「適量」のはずです。適正に使用すれば、ムダなく使えて余らなくなります。
クスリと正しく付き合う