クスリと正しく付き合う

意外と知らない塗り薬の適量は「FTU」で分かる

やさしく塗る
やさしく塗る(C)日刊ゲンダイ

 薬には消費期限があるため、もったいないからといって残った薬、特に開封済みの薬をとっておくのは危ない――。前回、お話ししたテーマを続けます。中でも、ため込みやすい薬のひとつが塗り薬でしょう。患者さんからは、「汚れない(汚染されない)から問題ない」「1回に塗る量が分からないから余ってしまう」といった理由をよく聞きます。

 しかし、薬自体を素手で触れば汚れますし、“軟膏ツボ”に入っている薬であればなおさらです。対策としては、薬をすくい取る際は素手ではなく、綿棒などを使用すれば汚染は少なくなります。1回に塗る量に関しては、薬局では「1日何回塗ってください」といった説明はされても、1回にどれくらい塗るかについては「適量」と言われることが多いのではないでしょうか。

 実は塗り薬の適量は、「FTU(フィンガー・チップ・ユニット)」という単位で決められています。大人の人さし指の一番先から第一関節までの上にのる量(チューブから絞り出した量)のことで、約0.5グラムに相当します。ローション剤であれば、「1FTU」=「1円玉大」となります。

 その1FTU分の薬を手のひら2枚分の広さまで塗り広げるのが「適量」とされています。保湿剤であれば「塗った後にティッシュペーパーをのせて落ちない程度」がよく、ステロイド剤であれば「炎症が起きている部位だけに塗るのがよい」ともされています。

 また、患部にゴシゴシすり込むのではなく、優しく塗ってください。さらに、炎症症状がある場合はしっかり治療して、徐々に薬を減らすのが適正とされています。怖がって薬を少量しか使わないと、治るものも治らなくなってしまいますので要注意です。

 処方される塗り薬の量は「適量」のはずです。適正に使用すれば、ムダなく使えて余らなくなります。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。