がんと向き合い生きていく

ニボルマブは効果と副作用の予測がまだ分かっていない

都立駒込病院の佐々木恒雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 当初、ニボルマブは患者数の少ない悪性黒色腫に適用とされ、薬剤開発費なども加味して1人当たり1年間で約3500万円、米国の2倍、英国の4倍という値段がついたようです。そして、それがそのまま患者数の多い肺がんに適用が拡大されたのです。「こんな高額な薬が次々と出たら医療保険財政を圧迫し、国の医療制度を滅ぼすのではないか?」とまで言われました。これまで、いろいろな議論が報道されていましたが、この2月にようやく臨時措置として薬価が50%切り下げとなっています。

 従来の抗がん剤は、がん細胞の核、DNA、RNAに直接作用し、がん細胞を死滅させるもので、これが正常細胞まで叩いてしまうため副作用が表れます。それに対し、「分子標的薬」はがん細胞の核を直接叩くのではなく、がん細胞の増殖を抑える薬剤として開発されました。そのため、「がん細胞にだけ働くだろうから、正常細胞には影響は少ない」と考えられましたが、実際には思わぬ副作用も見られました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。