B型慢性肝炎の新薬登場 治療や副作用はどう変わるのか?

石川ひとみさんもB型慢性肝炎を告白
石川ひとみさんもB型慢性肝炎を告白(C)日刊ゲンダイ

 B型慢性肝炎の新薬が2月15日に発売された。今後、治療はどう変わるのか? 武蔵野赤十字病院・泉並木院長に聞いた。

 肝臓の疾患というと、すぐにアルコールによるものというイメージが頭に浮かぶが、むしろウイルス感染によるB型・C型肝炎の方が問題だ。肝硬変の65%超がB型・C型肝炎で、肝がんでは90%をB型・C型肝炎が占める。

 C型肝炎の方がB型肝炎を圧倒的に上回っているが、近年、C型肝炎の画期的な薬が発売され、完治が期待されている。一方、B型肝炎はウイルスを駆除できる治療法はまだ開発されていない。

 慢性肝炎の治療は大きく分けて3つある。体の免疫力を高め、ウイルスの増殖を抑える「免疫賦活化」、DNAの複製を阻害してウイルスの増殖を抑える「ウイルス増殖阻害」、肝がんの発生を抑制・遅延する「肝がん進展抑制」だ。今回の新薬は「ウイルス増殖阻害」に該当する。

 B型肝炎のウイルスは、前述のとおり、駆除できる方法がまだない。

「B型慢性肝炎は一生続く病気です。治療期間は長期間にわたり、長期服用に伴う副作用の軽減が重要視されていました。さらに、患者さんの世代が高齢化しているので、安全性の高い薬がより求められていたのです」

■従来薬より腎臓、骨へのダメージ減

 台湾で行われた大規模研究で、B型肝炎ウイルスの感染者はいくつかの疾患のリスクが上昇することが明らかになった。それによれば、感染している人はそうでない人に比べ、糖尿病、高血圧、高脂血症、腎結石のリスクが上昇していた。

「別の研究では、B型慢性肝炎で高血圧、糖尿病がある高齢者は慢性腎臓病の有病率も高く、また、骨粗しょう症も経過を見ると、B型肝炎ウイルスに感染している人の方が骨折のリスク、頻度ともに高かったのです」

 新薬は「テノホビル アラフェナミドフマル酸塩錠(TAF)」(一般名)。慢性B型肝炎ウイルス感染症の成人を対象にし、1日1回の投与になる。この新薬のポイントは、従来の薬(テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩=TDF)に比べて、安全性が高いことだ。

「TDFは、血液中で分解されて腎臓尿細管へ取り込まれ、腎機能を悪化させる副作用が指摘されていました。しかし新薬は、消化管からそのままの形で血液中を通り、肝細胞へ運ばれます。そのため、腎臓へのダメージを大幅に軽減できるのです」

 新薬TAFと従来薬TDFを比較したB型慢性肝炎患者の腎機能検査でも、「新薬が慢性腎疾患の進行に対する影響が小さい」との結果が出た。

 さらに、骨に対する安全性に関する試験でも、新薬の方が従来薬より骨盤及び脊椎における骨密度の変化率が少なく、脊椎と股関節の骨密度低下を認めた患者の割合も低かった(第48週時点)。

■今後は第1選択の薬に

「安全性は新薬の方が高いですが、効果は従来薬と変わらない。特に最も大きく差が出たのは、腎機能への副作用です。従来薬を用いている患者さんも、腎機能の障害や骨粗しょう症、高血圧などの生活習慣病がある患者さんは、徐々に新薬に替えていった方がいいかもしれません。今後は、新薬が第1選択の治療薬になるとみています」

 なお、新薬の副作用として、頭痛、鼻咽頭炎、上気道感染、疲労、咳、悪心が報告されており、発生率は5~10%。いずれも、従来薬TDFでもほぼ同程度見られる。

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