“神の手”解説 「脳動脈瘤」2大治療メリットとデメリット

治療法は症例ごとに選択すべし(C)日刊ゲンダイ

 その後も、両者を比較した国内研究でコイル塞栓術の優位性が報告されてはいるが、急上昇しているわけではない。

「クリッピング術は再発が約1%と極めて少なく、多彩な形状でも手術が可能です。しかも、治療中に出血してもすぐに対応できます。開頭するため手術の痛みが伴い、手術者によって術後のけいれんや感染などを起こすリスクも高くなりますが、根治手術であることから、クリッピング術を選ぶ医療機関が多いのです」

 一方、コイル塞栓術は「頭部を切らないから痛くない。術後のけいれんが少なく、離床が早い」など多くのメリットがある。ただ、「再発率が約15%で、重度の腎機能障害疾患者や造影剤アレルギー患者にはふさわしくないこと」などのデメリットもあり、まれにコイル術中に脳動脈瘤が破裂し、すぐ開頭手術に切り替えるケースもあるという。

「その意味では脳動脈瘤の手術は、術者(執刀医師)が、開頭(クリッピング術)と血管内(コイル塞栓術)手術の両方ができる技量を持ち、患者さんによって使い分けできることが理想です。たとえば、クリッピング術に適応している患者さんはクリッピング術を施し、動脈瘤が脳の奥底にあったり、動脈瘤の入り口が狭く奥行きが大きかったり、お年寄りであった場合などはコイル塞栓術を使えばいいでしょう」

 この議論は10年以上続いているが、両者の短所・長所を綿密に検討して、症例ごとに最も適した治療法を選択するというのが結論のようだ。

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