独白 愉快な“病人”たち

病気で関節が変形 キャシー中島さんが悩んだ「握手が痛い」

病気になったことで昔以上にネイルに気を配るように
病気になったことで昔以上にネイルに気を配るように(C)日刊ゲンダイ

「ヘバーデン結節」という病気になったのは、20年ほど前、45歳のときでした。手指の第1関節に瘤ができて激しく痛み、変形してしまう病気です。右手の小指から始まって、時間を置きながら一本ずつ移っていくような感じでした。今では両手の全指がヘバーデン結節になっています。

 そして、5年ほど前からは両薬指にさらなる異変が表れました。第2関節が変形する「ブシャール結節」です。ヘバーデンとブシャールは関連していて、症状はほぼ同じ。左から始まり、今は右の薬指がとても痛い最中です。「痛い最中」と申し上げたのは、いずれ痛みがなくなるものだからです。

 初めは、急に右の小指が痛くなったんです。何だかわからないけれど、指を見ると第1関節のあたりに瘤のようなものができていました。痛みを説明するのは難しいのですが、とにかく「ガン!」という激痛です。関節の軟骨がなくなって骨と骨がぶつかってしまう病気なので、「ぎっくり腰」の痛みと似たものかもしれません。その後は触るだけで痛み、眠れない夜もありました。

■まだ40代だったのに「老化です」

 当時は今以上に知られていない病気でしたから、インターネットで調べてもまったくわかりません。「何だろう、リウマチかな」と思いながらも、右の小指だけのことだったので病院にも行かず、やり過ごしているうちに痛みが消えたんです。症状が出てから2年ぐらい経っていましたね。「治った」と思いました。でも、今度は右手の人さし指に同じ痛みが表れ始めました。放っておいたら、さらに左手の人さし指も……。そこで初めて整形外科病院に行き、病名が判明したんです。

 医師に「どうしてこうなったのでしょう。針仕事などで手先を使い過ぎですか?」と尋ねると、「老化です」ときっぱり。まだ40代だったのに(笑い)。

 原因は不明で特効薬はなく、テーピングや痛み止めの塗り薬や飲み薬を処方されただけでした。医師に「時間が経つと痛みはなくなります」と言われたのは救いでしたが、同時に複数本痛みがあったときは、痛み止めの薬を飲まなければ眠れませんでした。

 生活も、とても不自由でした。猫用の缶詰が開けられない、ペットボトルのキャップが開けられない、雑巾を絞れない、ペンを握れない、香水をシュッと押せない……。第1関節が痛いだけで、できないことがいろいろありました。意外だったのは、下着がはけなかったこと。痛くない方の手で頑張りましたけど、普段何げなくしていることが、こんなに不自由になるとは思いませんでした。

■不思議と針仕事は普通にできた

 そして、極め付きだったのが「握手」です。この仕事をしているとファンの方々と握手する機会が多いのですが、ときに強くギューッと握られることがあって、これが跳び上がるほど痛い。指の横からの圧が特別激しく痛むんです。なので、少し大げさに包帯を巻いていたこともありました。でも不思議なことに、ハワイアンキルトをやることには支障がなかったんです。今もそうですが、一番痛いときでもハサミは使えましたし、針仕事も普通にできたんですよ。それが最大の救いでした。もし、縫うことを取り上げられていたら、精神的に参っていたかもしれません。

 すでにヘバーデンの痛みはなくなりましたが、第1関節の上に2つずつ瘤ができ、関節が固まって、今はもう曲がりません。見た目もすっかり太くて、ゴツゴツした指になってしまいました。昔は「白魚のような指」と言われていたんですけど……(笑い)。

 珍しい病気かと思っていたら、ハワイアンキルト教室の生徒さんの中にもたくさんいらっしゃって励まされました。人によっては、指先がねじれたように変形して固まってしまうケースもあるようです。

 思えば、私の母親も手仕事が好きな人で、「指が痛い」と言っていましたから、もしかしたら同じ病気だったのかもしれません。遺伝や手仕事に関係しているかどうかはわかりません。でも、体質として関節の病気になりやすいのかもしれないと思い、膝や腰も注意して、痛みがあったらすぐ病院に行くようにしています。年1回は人間ドックも受けています。

 病気になって変わったことといえば、昔以上にネイルに気を配るようになったこと。手元が注目される仕事なので、武骨な指よりもネイルに目が行くようにね。でも、共に頑張ってくれている手なので、形は悪くてもこの手は私の誇りです。

 夫や子供は特に変わっていません。毎朝、猫の缶詰を開けておいてくれることくらいかな。ただ、夫にとっては、私が指輪を欲しがらなくなったことがラッキーなんじゃないかしら(笑い)。

▽きゃしー・なかじま 1952年、ハワイ出身。69年にレナウンCMモデルでデビュー。「ぎんざNOW!」(TBS)の司会アシスタントとしてブレークし、タレント・女優として活躍する。79年に俳優の勝野洋と結婚。現在はハワイアンキルト作家としても有名。原案・製作統括を務める舞台「横浜グラフィティ アゲイン」(俳優座劇場)が3月5日(日)まで上演中。

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