受診までの「応急処置」

【肛門のかゆみ】「押しふき」と「湿疹薬」で対応

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 肛門がかゆくなる症状を総称して「肛門掻痒(そうよう)症」という。原因はさまざまだが、最も多いのは排便後、肛門をふき過ぎることだ。東肛門科胃腸科クリニック(東京・恵比寿)の東光邦院長が言う。

「神経質になってお尻をふき過ぎると、肛門の入り口の皮膚に細かな傷がつき、そこに便がつくのでただれてかゆくなるのです。これを『肛囲湿疹』といいます」

 逆に、肛門に便が残ってもただれの原因になる。お尻をふくときに注意するのは「こすらない」こと。こすっても肛門に便をすり込むだけで、きれいにはならない。上手なお尻のふき方は、「押しふき」を2~3回するくらいでいいという。

 次に多い原因は、温水洗浄便座による肛門の洗い過ぎだ。

「肛門も他の皮膚の部分と同じように常在菌がいて、バリアー機能の役割を果たしています。温水で洗い過ぎて、その常在菌のバランスが崩れると、皮膚が刺激を受けやすくなってかゆみの原因になるのです。そうなると“皮膚カンジダ症”になる人も多いです」

 カビ(真菌)の一種の「カンジダ」も常在菌のひとつ。皮膚に増殖すると、赤いブツブツができてかゆくなるという。

 また、性感染症として知られる「尖圭(せんけい)コンジローマ」が肛門にできて、かゆみが出る場合もある。これはヒトパピローマウイルスの感染が原因。小さなとがったイボができ、集まると小さなカリフラワー状になるのが特徴だ。

 では、「ぎょう虫」の感染の可能性はどうか。

「今は畑で有機肥料(糞尿)を使わなくなったので、ぎょう虫の心配はまずありません。ぎょう虫は睡眠中に肛門の周辺に卵を産むので、就寝中の肛門のかゆみが特徴ですが、肛囲湿疹でも寝ているときにかゆくなる人は多い」

 いずれにしても肛門のかゆみは、肛囲湿疹が原因になっていることが多いので、とりあえず市販の湿疹薬(塗り薬)を使ってみるのがいいという。中には、痔の塗り薬を使う人がいるがほとんど効果はない。湿疹薬でかゆみが治まらなければ、カンジダ症や尖圭コンジローマなど他の病気の可能性があるので肛門科で診てもらおう。

「潔癖過ぎるのはよくありません。肛囲湿疹を繰り返す人は、お風呂で肛門をゴシゴシ洗わない。せっけんや洗剤も使わない方がいい。シャワーで洗い流す程度で十分です」