当事者たちが明かす「医療のウラ側」

腕の良い看護師は介護施設にいる

首都圏の50代介護施設経営者

 よく「介護施設やクリニックに勤務している看護師さんは技量が劣る」などと思い込んでいる人がいますが、まったく違います。

 私どもの施設では看護師さんの募集を行うことがありますが、病院勤務の若い看護師さんを採用することはまず、ありません。採用されるのは大抵、大病院を定年退職されたり、クリニックに勤務しているベテランの看護師さんです。

 そもそも病院勤務の看護師さんが応募してこないこともありますが、病院勤務の若い看護師さんは介護施設では役に立たないケースが多いのです。

 彼女たちが勤務していた病院では、がん、循環器、消化器など科目に分かれて仕事をしていることが多く、糖尿病や心臓病、腎臓病などさまざまな病人が集まる介護施設では、そのすべてをひとりで対処するだけの“腕”が必要です。注射一本打つにしても、若い健康な患者さんと違って高齢者の場合にはコツがいります。それを若い看護師さんは身に付けていません。

 しかも、高齢な入居者と年が近いベテラン看護師さんなら話も合わせられるし、世情に通じているので会話もはずみます。

 実はこれは重要なことで、私は認知症が増えているのは高齢者のお世話を孫のような若い世代が担おうとしているからだと考えています。

 もし年の近い、話題が共通な子供世代の人が高齢者のお世話をすれば、認知症になる人は少なくなるのではないでしょうか?

 実際、私の施設では60代の介護福祉士の方は人気者です。世間ではお年寄りでも、介護施設では必要とされる若者ですから、本人もイキイキしています。

 介護施設の看護師さんひとつとっても、世間がマイナスイメージを持っていることは残念なことです。