がんと向き合い生きていく

一瞬、答えに窮してしまったすい臓がん患者さんからの質問

都立駒込病院の佐々木恒雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 思えば、15年以上も前のことですが、私はある市民健康講話で「がん医療・最新情報」をテーマに講演したことがありました。その時は、さまざまながん治療の話をし、膵臓がんについては「とても難治性で、まれにかなり早い時期に見つかった場合は手術で根治もあるが、多くは進行してから見つかり、手術成績も悪い。内科的な治療は、せいぜい黄疸を取る処置(胆汁が流れるような処置)くらいで、抗がん剤治療もなかなか期待できない」といった厳しい現状に触れました。

■膵臓がん早期発見で5年生存率向上の報告も

 そんな講演と、来場者からの質問の時間が終わり、帰ろうとしたときのことでした。会場の出口付近で、痩せたか弱い感じの老婦人が私のそばに寄って来られました。そして、「私は膵臓がんと言われています。主治医から勧められて抗がん剤を飲んでいます。今日の先生のお話では、これは効かないということでしょうか?」と、私にたずねるのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。