思えば、15年以上も前のことですが、私はある市民健康講話で「がん医療・最新情報」をテーマに講演したことがありました。その時は、さまざまながん治療の話をし、膵臓がんについては「とても難治性で、まれにかなり早い時期に見つかった場合は手術で根治もあるが、多くは進行してから見つかり、手術成績も悪い。内科的な治療は、せいぜい黄疸を取る処置(胆汁が流れるような処置)くらいで、抗がん剤治療もなかなか期待できない」といった厳しい現状に触れました。
■膵臓がん早期発見で5年生存率向上の報告も
そんな講演と、来場者からの質問の時間が終わり、帰ろうとしたときのことでした。会場の出口付近で、痩せたか弱い感じの老婦人が私のそばに寄って来られました。そして、「私は膵臓がんと言われています。主治医から勧められて抗がん剤を飲んでいます。今日の先生のお話では、これは効かないということでしょうか?」と、私にたずねるのです。
がんと向き合い生きていく