がんと向き合い生きていく

一瞬、答えに窮してしまったすい臓がん患者さんからの質問

都立駒込病院の佐々木恒雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 とはいえ、やはり進行した膵臓がんは、依然として厳しいのが現状です。膵臓は腹部とはいっても、むしろ「背部」にあり、がんが見つかりにくい場所です。胃、胆管、腹部大動脈が関係するところなので、大がかりな手術になることも多いのです。また、根治手術が不可能というところまで進んでしまった状態で見つかることも多くみられます。

 そのため、膵臓がんの早期発見に力を入れる試みもなされています。膵臓がんのリスクファクターとされている因子(家族歴、糖尿病、膵炎、膵嚢胞、喫煙、大量飲酒、肥満など)を複数持っている方には積極的に受診を勧め、超音波診断などでスクリーニングします。そして、所見のある方は基幹病院で専門的な検査を行います。早期の膵臓がんを発見することができて、5年生存率が向上したという報告もあります。

 さらなる診断・治療の進歩が期待されます。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。