「HYGGE」と書いてフーガー。デンマークの伝統である「癒やし」が北欧から静かに浸透し、疲れ切った米国人に支持されています。
幸福度世界1位の国であるデンマークの国民にとって、「フーガー」は国民的な価値観、幸せの秘密のひとつともいわれています。これが米国でも注目され、昨年から「THE LITTLE BOOK OF HYGGE」をはじめとした関連本がベストセラーになり、オックスフォード国語辞典の「今年の言葉」の候補に挙がったほどです。
フーガーは、「健康で安心」「居心地良さ」「癒やし」といった意味で、行為やモノを形容するのにも使います。特にこうしなければならないというルールはありません。
北欧の暗くて寒い冬の間、家族や親しい友人が家に集まり、暖炉の前で温かいワインなどを飲みながら“まったり”する。ざっくり編まれた手編みのセーターやカシミヤのソックス、食べ物はミューズリやデニッシュ、フォームミルクでハートマークが書かれたラテ。キャンドルやシープスキンの敷物……。
こうしたシンプルな物に囲まれ、お互いに感謝しながら過ごす。そのようにイメージしてもらえれば分かりやすいでしょうか。また、北欧らしくサウナで親しい人とゆっくり過ごすのもフーガーです。
米国でのフーガー人気は、デジタル化やマルチタスクにストレスを感じる人たちの間でトレンドになっている「塗り絵」や「編み物」などとも関係がありそうです。
さらに、トランプ新政権の誕生と同時に医療保険問題をどうするかで全米に激震が走っているなか、社会保障が手厚い北欧が注目されているという側面もあるでしょう。ちなみに、スカンジナビア料理もトレンドです。
トランプ大統領をめぐって国民が2つに分裂し、悪化した家族や友人関係をフーガーで癒やすことはできるでしょうか。
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