役に立つオモシロ医学論文

「記憶」は失われても「感情」は残る

その人との大切な記憶が存在するから(C)日刊ゲンダイ

 研究の結果、認知症患者では悲しみ、幸福に関する映像の記憶をひどく損なっていました。認知症患者のうち4人は、悲しみを誘導する映像の事実、詳細を思い出すことができず、さらに映像を見たことさえ覚えていなかった患者もいました。

 しかし、感情の評価では認知症患者であっても、健常者と同様に悲しみ、幸福の感情がそれぞれ上昇していることが示されました。

 つまり、「記憶が失われても感情は残る」ということが示唆されているのです。認知症患者では経験そのものを記憶にとどめることは難しいかもしれません。しかし、経験から受ける感情を体感することはできるのだと言えるでしょう。

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